BOB

荒野の誓いのBOBのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
3.5
スコット・クーパー監督、クリスチャン・ベイル主演のネオウエスタン。

1892年ニューメキシコ州。インディアン戦争の英雄が、余命僅かなシャイアン族の長とその家族を護送する任務を命じられる。

'"Don't look back, my friend. Go in a good way. A part of me dies with you."

ネオウエスタンの良作。西部劇の代名詞である残酷なガンアクションはそのままに、絶対悪とされていた"インディアン"の存在を見直し、血塗られたアメリカの歴史(ハリウッド映画史)に切り込んでいく。

詩的で内省的でスローペースな作品ではあったが、死と隣り合わせである緊張感は常にあったし、映像美と俳優の演技には惹き付けられ続けたので、中弛みしなかった。

西部開拓時代を戦い抜いてきた男が、かつての敵、味方と旅を共にすることにより、自らの過去に向き合い、新時代の生き方を模索する。"かつての憎き敵を許すことができるか"というテーマとメッセージ性は、戦争や民族紛争を繰り返している現在にもそのまま通じる。

アメリカ原風景の映像美に心奪われる。草原、岩場、川、夜。自分も一行に加わったかのような気分で、ホーストレイルを楽しんだ。恥ずかしながら今回初めて認識したのだが、撮影監督は『ウォーリアー』『世界にひとつのプレイブック』『スポットライト』など、名だたる傑作に携わっている高柳雅信さん。

俳優陣の確かな演技が光る。個人的に一番良かったのは、ロザムンド・パイク。家族をコマンチ族に惨殺された婦人役。オープニングシークエンスの慟哭が強烈だが、それ以降も輝いていた。終始ぼそぼそ話す、クリスチャン・ベイルもさすがの演技。顔には出さない押し殺した感情がひしひしと伝わってきた。ジェシー・プレモンスとティモシー・シャラメがちょろっと出演している。

不満点としては、サイドキャラクターのドラマ。殺人の贖罪というテーマにはちゃんと関わってくるのだが、ご都合主義に感じることが何度もあった。

"Sometimes I envy the finality of death. The certainty. And I have to drive those thoughts away when I'm weak."

"I've killed everything that's walked or crawled. If you do it enough, you get used to it."

"If I did not have faith, what would I have?"

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