MasaichiYaguchi

荒野の誓いのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
3.9
「ファーナス 訣別の朝」のスコット・クーパー監督とクリスチャン・ベールが再タッグを組んだこの西部劇では、原題の「敵意」が表すように対立関係にある者達がアメリカ・モンタナ州を目指して呉越同舟の旅を繰り広げる。
映画は正に「敵意」を抱かせるような凄惨な出来事で幕を開けるが、先住民と開拓者との対立を中心した昔の作品や、ケビン・コスナー監督&主演の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」とも違うアプローチで対立関係にある者達の、物理的だけではない“心の旅”を描いていく。
この作品では立場の違う2人が軸になっていて、1人はクリスチャン・ベール演じるインディアン戦争の英雄で退役間近のジョー・ブロッカー大尉、もう1人はロザムンド・パイク演じるコマンチ族に家族を殺されてしまった未亡人のロザリー・クウェイド、この2人はジョーの護送の旅の途中で出会い、道中を共にすることになる。
このジョーが護送しているのが、かつての宿敵で多くの仲間の命を奪ったシャイアン族の首長イエロー・ホークとその家族。
ジョーにとっては仇敵以外の何者でもない一家を、皮肉にも目的地まで守り送り届けなければならない。
そしてロザリーは期せずして種族は違っても、愛する家族を奪った先住民と旅をする羽目になる。
彼らの旅は様々な危険や困難が立ちはだかり、艱難辛苦を味わうことになるのだが、更にジョーにとって任務だったとはいえ、先住民を殺戮した過去と向き合うことになる。
彼らはこのような艱難辛苦に立ち向かっていく中で、少しずつ変わっていく。
旅の中で影響を与える人物として死期が迫った首長イエロー・ホークがいて、このキーマンをウェス・ステューディが味わい深く演じている。
幾多の激しい銃撃戦の攻防を経て、彼らは旅の終わりに何を見出だすのか?
ラスト近くで描かれた敵意や恩讐の彼方にあるもの、その温もりが余韻として残ります。