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荒野の誓いのKUBOのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.2
東京に帰ってから5本目の試写会は『荒野の誓い』。

これ、最初に言っておきますが、すごい映画だった。いい映画だった。

ロザムンド・パイクって、すごい女優だなぁ。冒頭のシークエンスでの迫真の演技は圧巻!

インディアンに、夫と子供たち、生まれたばかりの赤ちゃんまでも殺され、家まで焼かれた女性(ロザムンド・パイク)。

今までに数え切れないほどのインディアンを戦闘で殺し、インディアンを憎む騎兵隊の大尉(クリスチャン・ベイル)。

捕虜となっていたインディアンの酋長を護送する命令を受けた大尉は、不本意ながらも出発するが、旅の途中で、ひとり生き残った女性(ロザムンド・パイク)やインディアンを私怨から虐殺した罪人などが一行に加わり、旅は混迷を深めていく。

「殺し続けると慣れてくる」恐ろしい言葉だ。

彼らは「Savages(野蛮人)」という言葉を使うが、太平洋戦争当時、我々日本人もそう呼ばれていた。人種が違えば基本信じあえなかった時代。今はどうだろうか?

宿敵であったインディアンの酋長を護送し、かつて部下であった殺人犯を移送するという人生の皮肉。

仕事で殺すことと復讐のために殺すことに違いはあるのか? この辺は戦争を肯定するか否か、に関わってくる問いかけだ。

白人が今更だけどネイティブアメリカンに “mercy” を求める作品なのかな?

最初は「白人」と「インディアン」という人種のくくりで見ていたのが、旅を共にすることでひとりの人間としてお互いを理解するようになる。

「過去を振り返るのはよそう、友よ。前に進もう」なんか今、韓国に行ってやりたい台詞でもあるが、これ、侵略した側から侵略された側に言ってる状況は、今の日韓にも通じるのも皮肉。

「ここは彼らの土地だ」そう、基本アメリカ人は移民、それも勝手に入り込んできた不法移民。にもかかわらず最初からいたかのように移民系議員に「帰れ」というトランプが現大統領である皮肉。

そして、こういう歴史の上に成り立っている国だから、いつまで経っても銃規制法案が成立しないアメリカの皮肉。

途中まで、言いたいことを全部セリフにしちゃってるし、テーマが分かり易すぎてちょっと陳腐かな〜、なんて思ってたら、、、

ラスト10分で真のテーマが突きつけられる! すごいよ。やられた!

喜びも哀しみも、全て噛み殺したような表情で演じたクリスチャン・ベイル。なんか高倉健の映画見てるみたいだった。

映画を見ながら、いろんなことを考えさせられたな〜。ハリウッドは基本リベラルです。
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