ゲタ

荒野の誓いのゲタのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.1
『広大な大地で慈悲と哀れみとで紡がれる罪と罰』

しっとりじっくり

ファン大熱狂!みたいな
派手なところは微塵もないけれど
それだけに見応えある
本当にいい作品でした

沁みましたね

思うに最近のアメリカ西部劇は
人を人と思わない先住民への
暴虐な行為の数々が
かえって報復を招くという
負の歴史というべき悪循環を

自らの罪深い感覚も踏まえながら
冷静にとらえて見つめ直すという
作品が多い気がします

で、お話はといえば
いい意味で極めて単純

任務とはいえ先住民を数え切れないほど
その手にかけたクリスチャン・ベイル
扮する軍人のジョーが

その先住民たるイエローホークと
呼ばれる、これまたアメリカ人を
殺しまくった伝説的な首長を
生まれ故郷のモンタナに送り届けるための
護衛の任を任されるという筋立て

劇中で向かうべく
たったひとつの護衛任務の旅を
観てるみんなも一緒になって
体験しつつ過ごします

この「呉越同舟」感が心地いい♪

ただ、"旅"とはいっても
そこは多難の連続

映像的に緩やかで牧歌的な風景が
流れているかと思いきや
突如先住民の襲撃で
先程までの風景が打って変わって
壮絶な殺戮し合いの現場と化します!

その後ももちろん旅は
続いていくのだけど
一度そんなシーンを
見せられたもんだから
その後の牧歌的なシーンが
まぁ、まるで信用できない(^^)

牧歌的なのにどうにも
「何か起こるんじゃないか!?」と
眉潜めて力込めて
悠々と馬が歩いてるシーンを見続けて
ぐったり疲れちゃったりします

でもその緊張感がいいんですわなぁ

旅の仲間は一筋縄ではいかない
面々が次から次へと入れ替わり
その一時だけでも
この旅の途方も無い困難さを
実感させてくれます

まあ、数々の逸話が挿入され
その都度心を乱されていく主人公を
終始抑えた感じでさばさばと演じていく
ベイルはもちろん凄いのだけど

やはり讃えなきゃならないのは
共演たるロザムンド・パイクの凄さ!

先日試写会ながら
実在の伝説的な記者の過酷なまでの
人生を鬼気迫る気迫で演じるのを観た
パイクでしたが

この作品では一転して
人生の悲嘆にくれる哀れな女性を
清楚な高貴さと相まって
演じ切っちゃってるんだから
もう脱帽しかないです

この幅広さは、もはや本物ですね
今回は特に美しかったー😍
小生の中で個人的に
「パイク時代到来中」です(^^)

アメリカが負ってきた罪と罰を
静かな視点ながらも
ブレることなく描きつつ

血の通った人間模様を
二人の名優が静かに演じ切る
新世代の西部劇ともいうべき
素晴らしい2時間でした

もはやクリント・イーストウッドか
ロバート・レッドフォードを彷彿とさせる
クリスチャン・ベイル渾身の
映画史に残したいほどのスンバラシイ
ラストシーンはほんま必見やと思います

二人のいろんな感情がないまぜになる
切ないシーンにつと涙が溢れちゃいます

ぜひ劇場の大スクリーンでこそ
観ていただきたい映画ですね
(って、ワシ誰やねん)

[19:05]スクリーン②
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