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荒野の誓いのはせのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.0
スコット・クーパー監督・脚本作品。クリスチャン・ベール主演。ロザムンド・パイク、ウェス・ステュディ共演。脚本家の故ドナルド・スチュワートの原案を元に、スコット・クーパーが脚本を仕上げた。

舞台となる1892年はアメリカの西部開拓期が終焉を迎え、先住民たちは居留地へと強制移住させられている。当時移住を逃れたコマンチ族の残党がゲリラ戦を行い、西部各地で白人を襲撃していた。冒頭でロザムンド・パイク扮するロザリーも、夫と3人の子どもたちをコマンチ族に皆殺しにされてしまう。クリスチャン・ベール扮するブロッカー大尉は、ウェス・ステュディ扮するシャイアン族の首長イエロー・ホークが癌で余命幾許もないことを理由に、彼とその家族を故郷モンタナまで護送する任務を命じられる。イエロー・ホークはかつて白人たちを虐殺してきた男で、ブロッカーは"野蛮人ども"に部下たちを殺されたことを恨んでおり、押し付けられた任務を仕方なく引き受ける。

原題の"Hostiles"は、白人から先住民へ、あるいは先住民から白人へ抱く"敵意"を表している。双方どちらにも言い分があり、憎しみ合い、殺し合う負の連鎖に陥っている。かつて『シャイアン』以前のジョン・フォード達が西部劇で向き合おうとしなかった闇の部分を、スコット・クーパーは真っ向から描き出した。

スコット・クーパーらしい男臭くて重厚で苦々しいテイストは、新たに挑戦した西部劇でも存分に発揮されている。だが本作は過去の凄惨な歴史を表現するためだけの作品ではない。トランプ政権下で敵意と憎しみによって、いまだかつてないほど分断されてしまった現在のアメリカそのものを描いているのだ。ブロッカーは互いを理解して認め合う道に進むことができた。ラストシーンの彼の決断に、監督の思いが込められているように感じた。
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