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荒野の誓いのrollinのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.5
REDEMPTION


西部劇版『若おかみは小学生』。あるいは『ウインド・リバー』の壮大な前日譚。

何言ってるか分からないかもしれないけど、映画の構造としては本当に若おかみは小学生だった。信じてください。
個人的には現代版西部劇最高傑作のひとつとして挙げたい『ファーナス』を手掛けたスコット・クーパー監督が、原罪をより近い距離で捉えに行った作品。

クリスチャン・ベイルとベン・フォスターの共演は『3時10分、決断のとき』を思い出すけど、今回クリスチャン・ベイルが護送するのはウェイド(ラッセル・クロウ)ではなく、
①余命僅かなシャイアン族の首長
②人妻ロザムンド・パイク
③逃亡のベン・フォスター

三者三様のお客様へのおもてなしを経て、クリスチャン・ベイルはおっこへと進化するのでした。(ちなみにおひとりさまの女性が多かったけどおそらくティモシー・シャラメ目当てでしょう。お気持ちは察します。)

そして内容よりも評価したい本作の最高ポイントは素晴らし過ぎる撮影!ファーナスを筆頭に、同監督でお馴染みのマサノブ・タカヤナギ氏のお仕事!本当にお見事です。
序盤から背中越しの決め絵をバッキバキにキメまくり。馬のフォローが完璧なのはもちろん、モンタナへ突入してからの溜息が出るような大自然の壮観たるや、溜息が出るようです。
神様が意図的にデザインしたとしか思えないようなグラフィカルな岩壁。遠景の山々を眺め想いを馳せるイエロー・ホークの画なんかは、もはやスターウォーズを引き合いに出せるくらいのスケール感で、シャイアン族伝統の葬送様式は、エピソード6ラストのダース・ベイダー火葬シーンすら想起させます。

マウンテンマンのスニークキルや、トミーの玉砕特攻など、敢えて目隠しをして観客の溜飲を下げさせないような演出は、暴力に対して真摯に向き合うスコット・クーパー監督らしい。とは言え、騎兵隊員たちが最後にはSAA“キャバルリー”に命を預けるの最高よね。コマンチ族とのワチャワチャしたM73&シャープス合戦とかスローモーでもっかい観たい!
「ジョーの小隊死にスギィ!」問題には、この際触れずにおきましょう。

監督ならではの俳優の演技を重視した間。ロザムンド・パイクの嗚咽にならない嗚咽。クリスチャン・ベイルの泣きの演技はやはりめちゃ巧い。深く腹の底で感情を噛み殺し、否が応にも罪と向き合わざるを得ない地獄めぐりの旅。
フロンティア(モラトリアム)の消滅によって一通りの役目を終えた騎兵隊。舞台となった1892年を以って陸軍制式拳銃の座を降り、ダブルアクションに譲るSAA。インディアン戦争の生き証人。要するにコイツらは政府に厄介払いされた者同士。
『ロンサム・ダブ』の旅の目的地でもあったモンタナの雄大な自然と、刻み込まれた悠久の時間は、人間の業を包み込んで余りある程に美しい。
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