ノストロモ

バッファロー’66のノストロモのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.3
何度となく観てきてそのアホらしいところも含め、どうしようもなく好きな作品。今回Filmarksによる再上映企画で初めて劇場にて鑑賞。
画面作りやファッション、音楽など、本作はよくお洒落映画の文脈で語られたりして勿論それらは素晴らしいが、ただそこだけで消費されるには惜しいほど、ここに刻印された孤独と悲しみ、やるせなさは本物だと思う。
粗筋だけをみればムショ帰りのどうしようもないダメ男の前に、彼を芯から理解し好きになってくれる女性が突然現れ、色々あってハッピーエンドというまあ都合の良いおとぎ話にすぎない。
だけど、ブルーグレイを基調にしたざらついたフィルムに映るギャロの赤いブーツや古着のレザージャケット。一番ふくよかだった頃のリッチのブロンドヘアー、濃いブルーのアイシャドウに、薄水色のドレス。二人が乗る車のミラーには安っぽいクリスタルのオーナメントが揺れ、寂れたモーテルには暖色の照明が灯る。そして、どれだけリッチが聖母のように全てを受け入れてくれても、結局はギャロの孤独と拒絶からくる冷たい緊張感、社会と相容れない不器用さがこの映画の基調をなしていて、そのセンスの良い荒涼と(リッチが象徴する)甘さの絶妙なさじ加減こそが、他に類を見ない本作独特の魅力につながっている。
レストランのトイレで「生きられない」とギャロが一人苦悩する中盤のシーン。あの場面をどう受け取るかで、本作の見え方は大きく変わってくるだろう。

昔、同じような赤いブーツを探したり、ギャロのパンツがトランスコンチネンツのものらしいという噂を聞いて店に行ったりしたが、結局似たようなものは探せなかった。
同様に本作みたいな感覚の映画も、他に出会わなかった。ギャロ本人がその後作ったものでさえ、明らかに違っていた。そんな作品。
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