あきらっち

バッファロー’66のあきらっちのネタバレレビュー・内容・結末

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

この映画を観たのはいつ以来だろう。
パッケージに惹かれたのはあの時と同じだが、映画自体の記憶はなく、まるで初めて観る映画。
歳を経て私の感性も少しは磨かれたのだろう。
今度はバッチリ心に響いた。

ヴィンセント・ギャロが演じるビリー。
クリスティーナ・リッチが演じるレイラ。

二人が織り成すちょっと風変わりな愛の物語。

ノスタルジーを感じさせる物哀しいオープニングシーン。鉛色の風景が寒々しい。
切なさを漂わせた孤独な男ビリーが現れる。

思い詰めたような表情。
ベンチで一人静かに悶絶する姿 。

てっきり人間の悲哀を描くシリアスな映画かと思いきや…


ビリーとレイラの出会いは最悪。
そこに愛が芽生える隙間なんて1ミリもなかったはずが…

子供みたいにすぐ怒鳴ったりメソメソしたり、
滑稽なほど意地張って、
強がっては謝って、
いきがってはお願いしたり、
女性に対しては腫れ物に触るかのように蔑んで…

まるで愛に飢えた思春期のこじらせ少年みたいなビリーの態度だが、ビリーの裏腹な心うちに触れ、ビリーに寄り添い、レイラは離れない。

愛に裏切られたビリーの切ない人生。
愛なんて信じないと見限ったビリーの心。
愛の無い人生に、生きてく意味なんて…

愛することに臆病なのは、
愛されたことがなかったから。

思えばレイラもどこか愛に飢えた孤独な表情をしているように私には思えた。
だから誰よりもビリーの不器用な気持ちが分かったのかもしれない。
本当にレイラが天使に思えた。

本当は人一倍誰かに寄り添いたかった。
背中を丸めて眠る姿は、まるで母の胎内で無償の愛に包まれ眠る赤ん坊のようだった。

写真撮影のシーンとホテルからラストにかけてのシーンが堪らなくいい。
レイラの溢れる優しさ。
ビリー、こんなにいい笑顔だったんだ。

物哀しいオープニングと打って変わって、心の中が爽やかで温かい、とびきり幸せな気持ちに満たされた。

ビリー&レイラ、いつまでもお幸せに!

※観返す度にビリーやレイラに対する愛しさが増し、細かな場面に散りばめられた可笑しさや切なさに胸がキュンとする。

※レイラを演じたクリスティーナ・リッチが可愛くて堪らない。ケバメの化粧も、ムチムチ豊満ボディーを揺らしながらのタップダンスも、写真撮影の時の変顔も、ビリーを包み込む優しさも、喜怒哀楽の表情も。

※ヴィンセント・ギャロの多才さに驚いた。演技の素晴らしさはもとより、監督、脚本、音楽まで手掛け、斬新な映像カットや場面場面での音楽のセンスも良くアーティストの片鱗を見せつけられた。

※秦基博さんの歌う“アイ”がふと頭をよぎった。
“目に見えないから アイなんて信じない
そうやって自分を ごまかしてきたんだよ
遠く 遠く ただ埋もれていた
でも 今 あなたに出会ってしまった…”
あきらっち

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