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千年女優のIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.7
今敏(こん・さとし)監督がこの世に残した映画はわずか4作。その内、ひときわ美しい光を放つのが今作『千年女優』である。アニメーションの可能性に挑戦した、アニメ好き"以外"にこそ薦めたい傑作だ。

監督の生前最後の長編アニメーションとなった『パプリカ』では、夢と現実の境を無くすことで混沌とした世界を演出し、アニメだからこそできる目眩く幻想の世界に私たちを連れて行ってくれた。
今作でもアニメーションの強みを多分に活かし、虚構と現実を織り交ぜて1人の大女優の人生を追体験する構成はまさに天才的センスが光る。

そして特筆すべきはエンディング曲の"ロタティオン"だ。平沢進氏が作品のために提供した楽曲であり、本編の作風に合致したスケールが大きく幻想的なサウンド。これもまた傑作である。

今監督は病のため46歳の若さでこの世を去った。
監督が亡くなった当時、新作の企画が進んでいた。タイトルは『夢みる機械』だ。
監督はどんな夢を描いていたのだろう。
監督は今、天国でどんな夢をみているのだろう。

監督の葬儀、ご出棺の時には今作のエンディング曲である"ロタティオン"が鳴り響いたそうだ。
この曲で監督は長い長い旅に出発した。
きっと今作の主人公のように、満ち足りた心での旅路であったことを願ってやまない。

(2024.1.29追記)
〈Filmarks今敏監督作品リバイバル上映企画第2弾〉としてシネマサロンさまにて鑑賞。
劇場の大画面・最高の音響でのロタティオンは至福であった。