旅するランナー

千年女優の旅するランナーのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.3
【七変化する映像・映画マジック】

30年前に人気絶頂の中、忽然と姿を消した、幻の大女優がいた。
彼女の半生を振り返るドキュメンタリーを製作しようとする映像製作会社社長・立花と若手カメラマンが、女優・藤原千代子の記憶をたどり、巻き込まれていく。
それは、女優になる前、女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を、生涯をかけて追い求める壮大なラブ・ストーリーでもあった。

次々に現れる、戦前・戦中・戦後の映画撮影シーン。
思念・妄想・歴史が怒涛のごとく絡み合い、見ている僕らも飲み込まれていく。
この映画マジックに、どっぷり浸かっていたいです。

「満月は次の日から欠けてしまうけれど、14日目の月にはまだ明日がある。明日という希望がね」
なんていう素敵なセリフもあります。
この映画は「一番大切なものを開ける鍵」をめぐる人生という名の旅でもあるんですけど、千代子の心の中にしまっていた一番大切な気持ちが明かされる締めのセリフ。
人間心理を表したかのような、この言葉がまたバッチリ決まっています。
ともあれ、2010年に46歳という若さで他界した、大映像作家・今敏の映像マジックを堪能しましょう。