CHICORITA主任

千年女優のCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
5.0
もはや説明不要のアニメーション映画の大傑作中の大傑作。

とにかく走る映画である。映画の半分は誰か(主に千代子)が走っているシーンで占められている気がするくらい、ひたすら走る、走る。

千代子は初恋の相手である鍵の君に再会したい一心で、現実と虚構が入り混じる混沌の中をひたすら走り続ける。
鍵の君の姿は初恋の相手というより、女優、芸術家としての初期衝動の象徴のようであり、決して現実には手に入れられない理想のもの、イデアそのもののようにも思える。
追いついたと思えばまた遠くへ行ってしまう。走り続ける、その終わりのないダイナミズムこそが女優であるということであり、芸術家であるということなのだと、この作品は訴えている気がする。

もちろん、一人で走り続けられるわけではない。伴走し応援してくれるファン(立花)や、撮影してくれるカメラマン(井田)のことも忘れてはいない。
しかし、彼らの存在や大切さをわかっていながら、最後には彼らを振り切り、彼岸へと千代子は去って行ってしまう。

「だってあたし、あの人を追いかけているあたしが好きなんだもの」
永遠の運動の中でしか生きられない、女優=芸術家のエゴイズム、業がこの最後のセリフに集約されている。

自分のような凡人には望むべくもない生き方だが、それに憧れ美しいと感じる心くらいはあるので、千代子の狂気じみて見えるほど直向きな姿に、感動の涙を禁じ得ない。
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