糖衣YEAH

千年女優の糖衣YEAHのネタバレレビュー・内容・結末

千年女優(2001年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

昭和を駆け抜けた名女優 藤原千代子。 
人気絶頂のなか、突然彼女は姿を消した。

長らく身を隠していたにも関わらず、
”あるもの”を渡したいという当時からの大ファンの男性(映像制作会社 社長)の取材に応じることになる。

そこで明かされたのは、彼女が女優を志すきっかけになった、名前も知らない絵描きの活動家の男性の存在だった。

彼は”いちばん大切なものを開ける鍵”として首から下げていた鍵と、”いつかきっと”と添えられた彼女の似顔絵を残して失踪してしまう。

千代子は、”鍵の君”として、彼の幻影を役を演じながら追い続けるようになる。




一定の軸に対して現実と役、過去と現在が肉付けされて、徐々に明らかになっていく展開に引き込まれた。

平沢進と今敏の親和性を大スクリーンで観ることができて本当に良かった。
主題歌のLotusは、曲を先に知っていたので
千代子の好きな花が蓮なことや、大ファンの社長がつけた社名がLotusなことを知ってこれか!と感動した。

パーフェクトブルーとは対照的でありながらも、共通する部分が多いように感じた。
(アイドルや女優本人の心情、一種の偶像崇拝に取り憑かれたファン、今どの次元にいるのかわからなくなる感覚、電車の窓に映る物憂げな顔のシーンなど)

時々出てくる白髪頭の老婆は、現実と役を重ね合わせて永遠に鍵の君を探し続ける渦に巻き込んだのか、、?


最後の、
“だって私あの人を追いかけている私が好きなんだもの。”という言葉にハッとさせられた。

(“だって私〜”の後には幸せだったから。のような言葉が続くと思っていた。)
恋焦がれた人を想い続ける、純粋な乙女心に偽りはない。
しかし、相手を好きな気持ちと、その自分を好きな気持ちのバランスは後半に行くにつれてかなり後者に傾いているように思う。
糖衣YEAH

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