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千年女優のせっのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.5

戦中から戦後にかけて活躍した大女優、藤原千代子のドキュメンタリーを撮りにきた彼女の大ファンの男が、千代子自身の人生と作品が交錯する不思議な記憶をたどって行く話。

千代子の大ファンである立花の視点で千代子を描くので、千代子は憧れの存在であり立花自身でもあり、またその千代子は偶像の対象としていつまでも若く清らかなことにどこか囚われの身になっている反面、自分自身も偶像を追い続けるという、不思議な二重構造。

追われる苦しみと追い続ける幸せ、映画の虚構世界と現実世界を縦横無尽に駆け抜けていく爽快さがあるのに千代子の駆け抜けていく先は常にスクリーンの画面を越えられない。映画の中で右に進む時って前へ進んでいる時や肯定的な時だけど、この映画右に進んでいる最中に何度も左へ進んでいくように捉える向きが変わったり、やっと右に進んだと思えば何度も転ぶ。

かつての千代子に憧れていた立花というファンからの視点が彼女をそうさせてもいるし、想い人を追いかけ前へ進んでいると思いきや出会いの時のあの頃の自分とは遠のいているジレンマがそうさせている。でも、たとえこの画面の中だけたとしても、決して手の届かない偶像を追いかけているだけに過ぎなくても、右へ右へと駆け抜けていく千代子は最高に綺麗。

画面の中で縛られてるとも言えるけどいつでも画面の中で蘇る、まさに映画やドラマとか映像作品の醍醐味をここまで爽快な映像で見せてくれちゃあね。食らっちゃうよ。こんなん多感な思春期なんかに見たら食らいまくりだよ。
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