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千年女優のefnのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.5
 編集の見本市。トラッキングで走り出したかと思えば少女を被写体にマッチグラフィック、転げたかと思えばマッチアクションで別の時代へ状況へ。映画から映画へと跳躍していくが、すべてが編集でつながっている。
 邦画を多く引用し原節子、高峰秀子らの人生をなぞっている、ように見えるがそうではない。原節子、高峰秀子、蜘蛛巣城、二十四の瞳、紋次郎、無法松、君の名は、これらは運動と構図の一致で藤原千代子という像に結び付けられ、完全に同一化している。結びの「私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの」という台詞さえ私としての千代子から女優への回帰を示唆している。(冒頭のTV早回しのジャンプカットがこの台詞を代弁している)
 そもそも作品間を飛び交う少女を誰なのかを容易に認識できる、ということが異常なのだ。あまりにもマッチカットが自然に仕込まれているために、そのすごさに気付く事ができない。
 引用が単なる映画趣味に留まらず、ここまで技巧的に昇華された作品は他にないのではないか。無数の動画を脚本の指示通りにつなぎ合わせたものが映画だとするなら、千年女優はその一歩先を行っていると言えるだろう。邦画の総決算であり、脱構築であり、技術的特異点に達した傑作。
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