せみ多論

千年女優のせみ多論のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
5.0
ケチのつけようがない。ストーリーは、ふと出逢った”鍵の君”に恋し、追って生きていく内に大女優にまでなった千代子がその人生を語り、それまでに演じた作品に準えて展開していく。
千代子という一人の女性の生涯が、演じてきた様々な時代の役を通して行くことでまるで千年もの間一人の男性を追い続けているように感じさせる壮大な演出。ある種の異常さすら感じるような一途な思いは、まさにキャッチコピー”その愛は狂気にも似ている”であり、そして狂おしいほどに切ない。
そして、最後の台詞『だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもの』ここが最後にこの悲しい恋の物語に打ちひしがれる我々を救ってくれる。彼女は最後に自分の人生を良かったと思っているのだから。そして続く平沢進さんの歌うテーマ曲が鳴り響くと、もう涙をこらえることはできなかった。
こんなに美しく、儚く、切なく、それでも観て良かったと思わせてくれるラブストーリーはなかった。この映画に出会えて本当に良かった。
せみ多論

せみ多論