ヨミ

コクリコ坂からのヨミのネタバレレビュー・内容・結末

コクリコ坂から(2011年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

吾郎、悪くないじゃん!
ちょっとスノッブすぎるところはあるがね

文化系部室棟カルチェラタンの取り壊しをめぐる風間や生徒会長の水沼の戦い、そこに巻き込まれていくメル(海)は、風間の出生についてあれこれ振り回される。

掃除に駆り出されるのが女で、そのおかげでカルチェは存続するのだが、それをジェンダー的にどう見るかは迷う。時代的に言えば性別役割分業観の最も強い時期のひとつだろうし、仕方がないのだが。

カルチェは非常に美しく描かれており、これでもかと文化系夢の園となっている。人文系にいると「いいなあ」と思ってしまう。俺にもひと部屋くれ(文藝部、というか週刊カルチェラタン編集部に『岩波 思想・哲学事典』があり、「おそろじゃん」となった)。

水沼やヒロさん(広小路さん。画家? 美大生?)のビジュがよく、つい見てしまう。ヒロさんは「腹減った……」とうめいたり、送別会でひとりだけ爆食いしてたりして大変キャラが立っていた。水沼も東京来訪時に「神田の叔父のところに寄る」と、なんとなく世界の広がりを見せてくれたし(所謂「チェーホフの銃」的には良くないのかもしれんが)。

話自体に盛り上がりがそんなにあるわけでもないし、文化資本に溢れた横浜のボンボンたちの話に過ぎないのだけれど(解決策も資本家に便宜を図ってもらうというものだし)、画面の美しさや動きの綺麗さは流石で、話も情緒と呼べるようなものもあり(風間が言うように「安いメロドラマ」感はあるが)、『アーニャと魔女』に絶望した身としては「ナメてたけど悪くない!」と反動で満足感が割とあった。
ヨミ

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