レインウォッチャー

アラジン完結編/盗賊王の伝説のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

2.5
もうだめだ、この国…

というわけで『ジャファーの逆襲』に続くOVA、相変わらずの作画の粗さはまあこの際慣れるとして、中身もいよいよグズグズに。砂上の楼閣とはこのこと?

ようやくジャスミンとの結婚が目前となったアラジン。しかしなぜかおむずがりのご様子、「僕には結婚式に呼べる父親がいないから…」とか今更なことを言い出してゴネる。

前作の就職回避ラストでも薄々わかっていたのだけれど、ははあん、こいつ生粋のニート/ヒモ気質だな?

というのも、もともと一作目の頃からアラジンの明確なモチベって「良い暮らしをしたい&ジャスミンをGetしたい」くらいしかないので、当然っちゃあ当然なのですよね。それでも美しく逃げ切りの一作目はぜんぜん良かったのだけれど、広げないまま続編だけ作るからキャラが可哀想なことになってる。
せっかくの《ダイヤの原石》も、磨かなければダイヤにはならないという教訓だろうか。逃げて、ジャスミン!それダイヤやない、炭や。

しかし、そんなアラジンに輪をかけてヤバいのは王様(ジャスミンパパ)である。
アラジンの父は盗賊王カシームとして生きていることが早々にわかり、なんやかんやでアラジンは父を手伝う展開になる。で、なんだかイケオジで雰囲気良い人っぽいものの盗賊には違いないカシーム、それを逃がしたアラジンを、王様は1ラリーくらいの会話で赦してジャスミンと結婚させてしまうのだ。ええぇ…

ジャファーは確かに悪人だったし、民衆にとって良い政治は行っていなかったろうけれど、少なくともこの節穴ポンコツよりは国をまわす仕事をしていたのではなかろうか。彼なき今、もともと経済格差も激しそうなアグラバーの民は暴動・革命待ったなしであろう。チャンスだ!今ならいけるぞ!

というわけで、もし後年になってアグラバーの滅亡史が書かれることがあれば、おそらく今作のストーリーがその第一章になりそう。(第二章の副題は「楽勝」。)
そんな意味でも、2019年の実写リメイク版『アラジン』は順当なアップデートだったと思う。今作を観れば、その価値をより重く感じることができる…今となってはそんな効能があることは確かな一本だった。

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いちおう見どころも書いておくと、お馴染みジーニーの躁ムーブだろうか。細かすぎて伝わらないモノマネの数々、乱射されるディズニーネタのほか、ウディ・アレンとかもやってた気がする。
あと落ち込むジャスミンを優しく明るく元気づける様とか、もう彼はこの世界最後の良心だわさ。