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アメリカン・ガンのHKのレビュー・感想・評価

アメリカン・ガン(2002年製作の映画)
3.6
これまで全く知らなかった日本劇場未公開作品。
なんとジェームズ・コバーンの遺作です。
この映画、タイトルとジャケ写から想像できるアクション物でもノワールでもありません。
コバーンが演じる主人公は殺し屋でも刑事でもなく、第二次大戦時に心の傷を負った田舎町で夫婦で暮らす老人です。
じゃあナゼこんなジャケ写かというと・・・

私はコバーンの作品はアカデミー助演男優賞を受賞した『白い刻印』(1997)を観たのが最後でしたが、本作はその4年後の作品。
昔からのコバーンを知っていると『白い~』もそうでしたが、本作もかなり異色の役柄。
ご高齢のコバーン(当時74歳)は顔にちょっとリー・マーヴィンが入った感じで、眉毛はブレジネフ書記長っぽくなってます。
真っ白の髪はもうともかく、リウマチの手が痛々しいのがちょっと悲しい。
でも老いてなお堂々としており、全盛期の頃のコバーンの顔が全編に見え隠れします。

で、どんな話かと言うと、自分の娘の命を奪った一丁の銃の素性を調べる旅に出る父親(コバーン)の話です。
ある町工場で製造された後、いろんな人の手を経て、最後に巡り巡って主人公の娘の命を奪うことになった銃・・・
歳をとったコバーンが地味に歩き回るだけで、主人公が第二次大戦従軍時代の戦闘シーンの回想はモノクロで描かれますが、派手なアクションも何もない社会派ドラマです。

アメリカの銃社会を問う問題作と書かれていますが、銃社会ではない日本ではちょっと共感しにくい問題かもしれません。
それでもとても複雑な感情を呼び起こす作品ではあると思います。
開拓時代から銃によって築かれてきたアメリカの歴史。
今でも多くのアメリカ人、とくに従軍経験のあるアメリカ人にっとって銃は自分や家族を守るための大切な道具なのかもしれません。

コバーンの妻を演じたバーバラ・ベインが少ない出番ながら印象的でしたが、この人なんとマーティン・ランドーの奥さんだそうです。
数々のガン・アクションをこなしてきたコバーンの遺作としては、意外で皮肉な作品ともとれますが、遺作にふさわしい力作と言えると思います。
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