シンタロー

過去を逃れてのシンタローのレビュー・感想・評価

過去を逃れて(1947年製作の映画)
3.8
カリフォルニアの小さな街でガソリンスタンドを経営しているジェフ・ベイリーは、地元出身の純真な女性アンと付き合い、釣りをしながらのんびり暮らしていた。そこに昔の知り合いジョーが訪ねてくる。ジョーのボスであるウィットに呼び出されたジェフは、ウィットの待つタホ湖へ向かう道中、隠していた過去をアンに語り始める。本名はジェフ・マーカム。ニューヨークで私立探偵をしていた。3年前、カジノを経営しているウィットから、自分を銃撃して4万ドル持ち逃げした恋人キャシーを連れ戻して欲しいと依頼を受ける…。
祖父がこの時代のロバート・ミッチャムの映画。特にフィルム・ノワールが好きで、その影響で母と自分が何度も観ていた作品です。初見は登場人物の人間関係、騙し騙されの事件が入り組んでいて、正直よくわからなかったのですが、こういうのをスルメ映画というんでしょうかね。観るごとに味わい深さが増すのは、ミッチャムの飄々とした芝居と佇まいによるところが大きい気がします。正統派な二枚目じゃないし、演技派なわけでもないのですが、唯一無二の存在感。特にモノクロで映えるんですよね。作中のナレーションも作品の雰囲気にぴったり。ノワール必須のファム・ファタールが登場しますが、はっきり言って知的じゃないし、罠もかなり雑なんだけど、わざわざハマっていくミッチャム。おい、どうした、って思うんだけどカッコいいんだよなぁ。監督のジャック・ターナーは英語表記で、フランス人のジャック・トゥルヌール。過去から逃れられるわけもなく、破滅的な結末へ向かっていくストーリーはいかにもおフランス的ですが、ラストの粋な描写は心地よい余韻を残してくれます。84年にテイラー・ハックフォード監督×ジェフ・ブリッジス主演「カリブの熱い夜」でリメイクされますが…何とも言えません。
主演のロバート・ミッチャムは復員後の主演作。陸軍では医療職で性病のペニスチェックが任務だったという驚き。本作では元ヘビー級ボクサーという過去を活かした格闘シーンも披露。翌年にはマリファナ所持で逮捕される事件が起こりますが、出所後は"Bad Boy"のイメージでさらに活躍という異色の経歴のお方。愛妻家で妻のドロシーとは亡くなるまで連れ添っています。ファム・ファタールなヒロインにジェーン・グリア。アンジェリーナ・ジョリーを上品にした感じの風貌で悪くないと思いますが、悪女がハマりすぎたせいか、以後あまり出世できず、本作が代表作ですね。「カリブの熱い夜」ではヒロイン、レイチェル・ウォードのママ役で出演されてました。ウィット役には映画デビュー間もないカーク・ダグラス。個人的に彼のギラついた佇まいが苦手なのですが、この頃はまだ若くて普通でした。もう一人のヒロイン、アン役のヴァージニア・ヒューストン、主人公を慕う聾唖の少年ディッキー・ムーアの真摯な芝居は出色です。
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