LEONkei

カインド・ハートのLEONkeiのレビュー・感想・評価

カインド・ハート(1949年製作の映画)
4.0
英国貴族〝ダスコイン家〟と血縁関係がありながら、相続はもとより後継者にすら名前も上がらず軽くあしらわれる貧しい青年〝チャルフォント公爵〟の話し。

青年は自身が当然貴族の仲間入りをする権利があると思ってはいたが、それを阻む〝ダスコイン家〟を静かに恨み憎み妬み密かに恐ろしい計画を企てる。

それは〝ダスコイン家〟の後継者8人を殺害すること…。

内容はサスペンス、それが喜劇でも有り当時の英国階級社会を皮肉るブラックジョークの様相にも映る。

そして8人の後継者を演じるのが、名優〝アレック・ギネス〟。
タイプの違う1人8役の演技が素晴らしい。
トム・ハーディの性格の違う双子のギャング役…
ピーター・セラーズの第二次世界大戦当時のヒトラー役やイギリス軍人や大日本帝国皇太子などの6役が見事な怪演を見せたが、上に上がいたと実感させられる〝アレック・ギネス〟。

本当はこの1人8役が物語の本質とは違う事は百も承知で、内容自体が変わる訳ではないので個々に違う俳優が演じても良いのかもしれない。
ただ必ず1人や2人、役にしっくりこない俳優がいるもの。

なぜ、面倒で手間のかかる8役を演じるかと言えば、〝名優を8人揃えるのは大変な事だが、それを解決するのは1人の名優が8人の役を演じれば良い〟と、言うことでしょう。

映画をより際出せているのは、確実に8役を演じた〝アレック・ギネス〟の存在が大きいはず。

青年〝チャルフォント公爵〟の紳士的で誠実な面影の半面、恐ろしい殺人を犯すギャップに観ている側も引きつけられる。

無闇に視覚的効果で恐怖心を与えるのではなく、テンポ良い展開がスマートでコメディにすら感じる。

綿密で複雑な謎解きサスペンスではなく、むしろシンプルな構成だからこそ俳優の演技力が登場人物の感情を引き立てバランス良くできた映画ではないでしょうか。

終わり方も実にスマートで『あぁぁぁ~』って感じになります..★,
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