「渇き」
冒頭、モノクロームに映る池。
草叢に寝転ぶ男性、歌が聞こえる、売れない詩人ヴィジャイ。家族との問題、娼婦グラーブ、大学時代の恋人、ベストセラー、出版社、置手紙、夢の世界。今、事故死と勘違いされた男の運命が描かれる…
本作はグル・ダットが前作「洪水」に続いて監督したメロドラマで、この度初見したが重苦しい雰囲気が満ちている。
ダグラスサークの作品も個人的にはあまり好きではないと言うよりかはこの手のドラマ自体があまり好きではないのだ。
理由はいくつかあるが、まずお涙頂戴に加え翻弄される主人公がいて、そこにはリアリズムが特になく、実際に起きにくい嘘が散りばめられている…言わばご都合主義のジャンルだからである。
だが、先日サークの作品を数本見て(とりわけ天はすべて許し給うは大傑作)とても心に残った作品がいくつかあった。
それもやはり今言ったような内容だったが映像があまりに美しすぎてそっちの芸術性に感動してかなり高評価を自分の中では与えた。
この作品もその一つで、現実世界からファンタジーのような映像に切り替わり、登場人物が夢の世界に移り変わった様な演出がこの作品ではとても美しく儚く映される…。
いや〜インドの女優さんは皆美しいね。
さて、物語は売れない詩人ヴィジャイの詩を好んでくれるのは娼婦のグラーブのみ。
自暴自棄になったヴィジャイはとある日、鉄道事故で死亡したと誤解されてしまう。彼の死後に発売された遺稿詩集はベストセラーになって…と簡単に言うとこうで、踊って歌うスモックの効果が非常に発揮されているシーンはとても素敵。
階段を登って満月にシルエットが映る女性の姿や歌ってる歌詞の意味合いが素晴らしい。
映画の終盤の大暴動は凄まじい迫力がある。
この監督、風の使い方が上手すぎる。
まるで侯孝賢の作品見ているかのようだ。
あのラストは感動する。
余談だが、2005年のタイム誌による映画史上の名作100選の 1本に渇きが選出されている。また近々、日本でも大インド映画祭が開催しないかな…是非、劇場で観たい。