戦乱さなかの中国では、“衛”と“梁”、両軍の厳しい戦いが繰り広げられていた。
そんな中、時には死んだふりをしながら戦場を要領よく生き延びてきた梁の兵士が、衛の負傷した若き将軍を運よく捕虜にすることに成功。
褒美目当てに将軍を捕虜として連れ帰り、故郷で平和に暮らそうと目論む。
ジャッキー・チェンが20年の構想を経て原案、製作、主演、武術指導を一人何役もこなして作り上げた大作。
ある種のロードムービー的な内容でした。
舞台は、秦が中国統一を果たす前の戦国時代。
負傷し動けぬ衛の若き将軍をひょんなことから捕らえた梁の農民兵ジャッキーが、褒美をもらうために“手柄”を国に持ち帰ろうと様々な困難に遭いながら奮闘するが…。
邦題『ラスト・ソルジャー』は映画の意図を伝えてはいるものの、インパクトが弱い。
英題『Little Big Soldier』でなんとなく言いたいことが伝わり、原題『大兵小将』が、一番作品の内容をよく伝えているでしょうか。
少々おふざけのジャッキーが前半続きますが、次第にお話はシリアスなものになり、争いばかりを続けるむなしい人間の姿をただただ滑稽に描き、笑わせてみせるのです。
ジャッキー流に、戦の虚しさや平和とは何かを突きつけて素晴らしい。
敵味方が一蓮托生の2人旅、文字通りの「呉越同舟」ですが、この筋書きが「平和」というテーマを描くのに文句なくはまっています。
物語のまとまりもよく、「平和」を描く寓話(中国風に言うと「故事」でしょうか)としてすんなりと入り込めます。
また、ストーリーに大して関係なく1人踊る美人が現れるが、男ばかりの作品でむさ苦しいから“色”を付けたのだろう。
それはそうと、年齢不詳のジャッキーの役どころがすごいといえばすごい。
かなりいい演技してます。
あと、唸らされるのはジャッキーのアクションコーディネーターぶり。
正直アクションシーンは期待するほど多くはありませんが、ジャッキーの生み出すアクションシーンの独創性は未だ揺るぎません(刀を取り合うシーンや、石つぶてを使ったアクションシーンは必見)。
コミカルな要素を取り入れたアクションにおいて、ジャッキーの右に出る者はいないと改めて感じさせてくれました。
ただ個人的にはラストが少し弱かった気が…。
だが、中国史を多少なりとも知っている人であれば、納得のオチではあるのでこれはこれで許せてしまう。
いつものようなスカっとするジャッキー映画ではないが、しっかりとしたストーリーとテーマ性のおかげで、なかなかの名作になっていると思う。