半兵衛

復讐鬼の半兵衛のレビュー・感想・評価

復讐鬼(1950年製作の映画)
3.8
シドニー・ポワチエ演じる黒人医師があまりにも白人から見た理想的黒人キャラなので少し白けるものの、それでも嘘臭さを感じることなく誠意に溢れた青年医師として存在感を発揮しているところにポワチエの役者としての才能を感じさせた。

そしてそんな彼に治療してもらったもののその甲斐もなく亡くなった弟を過失致死だと言い張り殺人の罪を着せんとする黒人憎悪に満ちた犯罪者を演じるリチャード・ウィドマークの熱演も素晴らしい。デフォルメこそされているものの黒人に対する偏見そのものは現在も存在するレイシストの意見と変わらないのが怖いし、異様な黒人憎悪がみなから無視されてくると「俺が嫌われるのは医師のせい」と自分の非を都合よくすり替えてしまい医師を攻撃する発想になるのも「俺が頑張って考えたアイデア」を盗用したとして正義の行動をとったと勘違いした某殺人事件の犯人みたいで生々しい。

そんな二人の狭間で揺れ動くクールだが常識のあるヒロインリンダ・ダーネルが印象的で、あくまでヒューマニズムに則って行動するポワチエ、そんな彼に触発されるダーネル、自業自得な結末を迎えて弟と同じ待遇に陥るウィドマーク三者によるラストがビターな余韻を残す。

でも黒人を煽るウィドマークよりも、見た目は普通の人なのに黒人の医者に恐ろしい対応をするおばさんの方が当時の黒人差別を如実に表していて怖かったりする。それと肝心のポワチエが四番手あたりにクレジットされていたり、他の黒人俳優が名前すら載っていない点も時代を感じさせた。
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