ーcoyolyー

サマー・ストックのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

サマー・ストック(1950年製作の映画)
3.4
ジーン・ケリーが怯えている。ジュディ・ガーランドに終始怯えて腰が引けている。『踊る海賊』の時に較べれば大分持ち直しているように見えるけどその時のトラウマとジュディ・ガーランドに敵視されてそうな雰囲気はある。ジュディと同じ現場にスターは2人いらないんだろう。アステアだったらまだマシな空気になってたんだろうけどジーン・ケリーにアステア並の気遣いを求められるものでもなく。ジーンの纏う空気感でこの時撮影所にジュディがいるかいないか伝わってくる。いない時は心から安堵しているし、いる時はたとえ画面に映っていなくても警戒心マックス。このコンビは華のありようが近いのでジュディ・ガーランドが近親憎悪に陥るのもわかる。2人でのタップダンスシーンの華やかさを目の当たりにすると組ませたくなるのもわかるんだけどそのせいで現場とジュディの状態が悪くなるのもわかる。ジーン・ケリー本人は引いてるつもりでもジュディ・ガーランドから見ると煽られてると感じるのもわかるから。引き立て役になれないスターってそういうものだから。

途中でここにはジュディいなそうなんだけどいきなりジーンのモードが変わったように見えたシーンがあってなんだ?と思ったらそこからスターdisのセリフが続いたので、そういうことか、と思わず笑った。あれは当時の現場のジュディへの総意なんだろうな。本人いないところじゃないと絶対撮れないし下手したらジュディ用の脚本だけにはこのくだり入れなくて後で試写見て本人激怒まである。

これ企画当初の設定はジーンとジュディのラブコメだったんだろうけど、そこをジュディから激しく拒否されてジュディの妹役とジーンのラブストーリースタート(最後の最後だけ取ってつけたように主役2人のハッピーエンド)という不自然な形になったんだと思う。そしてジーンも本人からはNG出さなくても内心ホッとしたんだと思う。

ジュディが太ったとかそういうのは致命傷にならないタイプのスターだと思うので、そこで文句言われて歌手活動に軸足移すのも妥当だなというか、MGMのオープニングを映し出される度に「お前らが……!」と憎くなってしょうがなくなっていたのでMGMからようやく解放される喜びを今ジュディと共に噛み締めています。
ーcoyolyー

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