KnightsofOdessa

真実の囁きのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

真実の囁き(1996年製作の映画)
3.8
[悪のグレースケールの先に善はあるのか] 78点

クリス・クーパーは本当にいい仕事をする俳優だから大好きなのだが、悪人面も手伝って最近じゃ出番も少ないお父さん役とかでしか見ない。同年公開の「アメリカン・ビューティー」の隣人役も手伝っていることは否めない。レベッカ・ホールといいクリス・クーパーといい、みんな使いどころを間違えてるよ。

軍の旧射撃場で見つかった白骨死体を調べる保安官サム・ディーズは、町の英雄だった父バディの影を追いながら事件を調べていく。テキサス州の長い歴史を紐解くと、解放奴隷、不法移民、残留した白人それぞれの子孫が複雑に絡み合っており、バディ・ディーズはその間に上手く入り込んだのだった。と、表面はキレイなのだが、中身は"善と悪をバディが決めていた"というものだった。既存の酒場からピンハネはしないが、新たな酒場は開けさせないといったように。

多種多様な人間(白人、黒人、メキシコ人)が絡む群像劇ではあるのだが、ただでさえ重い情報量を持つ群像劇にミステリーやロマンスを組み込もうとしたため、底が抜けてしまった感じはある。また、バディ亡き後のテキサス州は人種間問題が再燃しそうだが、歴史の授業についての衝突以外話があまりないのもどうなのかと思った。

しかし、本作品の"外では英雄だが家族にしてみればただの人間だった父親"という影を追う中年男(主人公サム・ディーズ、及び新たに赴任した訓練官デルモア・ペイン大佐)が、嫌煙していた父親と向き合うことで、彼らの人生を理解し、新たな考えを享受するという物語は気に入ったし、悪のグレースケールという考え方は私の哲学とも合致するし、そして何よりクリス・クーパーとエリザベス・ペーニャだし、ということで本作品には高得点を送る以外方法がない。

映画を色々観たからかよく分からんが、展開が読めてしまうシーンが多々あった。勘のいいガキは嫌われるらしいので、ショウ・タッカーに殺される日も近いかもしれんな。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa