カナダ出身のアーサー・ヒラーが監督、一昨年惜しまれながらも亡くなったニール・サイモンが脚本、そしてちょうど人気沸騰中だったスティーヴ・マーティンという才能豊かな3名が集結した、いかにも80年代らしい緩めのコメディ。
ニューヨークで広告会社に勤務する独身男性のラリーは、ある朝恋人が浮気しているのに出くわし、口論の末になぜかラリーが家を追い出されてしまう。公園で出会った中年男のウォーレンと意気投合し、彼から”ロンリー・ガイ”=孤独な独り身男性がどれだけ社会に存在しており、彼らはどのように生きているかについて諭されるが…。
現代の日本社会にも通じる、シングルとして生きていくことの楽しさだったり寂しさだったり、誰もが共感しうるテーマをコミカルに描いた作品。別に結婚や交際が全てとは言わないけれど、愛する人がいないというのは寂しいこと。でも、かといって独身でいるのが辛いわけではなくてそれはそれで気楽だし、一人だからこそできることもたくさん。ウォーレンに説き伏せられて、いつしか”ロンリー・ガイ”でいることに満足し始めるラリー。きっと一人の時間が好きな人は、彼の考え方に思わず感情移入してしまうはず。とはいえラリーは結構変わった性格の持ち主なので、ある種の”開き直り”とも取れますが(笑)。
婚活がうまくいかなくて親友の結婚をねたむ女性とか、一度も女性と付き合ったことが無い冴えない男性とか…、映画でしょっちゅう個性的な主人公として描かれがちですが、実はそれってものすごくありふれた存在だからこそ多くの題材に選ばれるのかなと。そういった悩みは実に普遍的なもので、同じような境遇の人たちは想像以上に数多く存在しているんだよというのを本作は教えてくれます。こんな状況下というのもあり、一人の時間が必然的に増えてしまっているからこそ、きっと勇気づけられること間違いなし!(笑)
ただ「一人って最高」と終わるだけでなく、同じくらい「誰かといるって最高」というテーマもはらんでいるのも本作の魅力。変にどっちのほうが優れているとか決めつけずに、どちらの状況でも人生を楽しめる余裕を持つことが大事なんだなと。静かな笑いの中に、深~い人生の教訓があるところ、さすがの脚本でした…!