ボブおじさん

ジェシー・ジェームズの暗殺のボブおじさんのレビュー・感想・評価

3.8
ブラッド・ピット自身が製作者のひとりに名を連ね、ニュージーランド出身の新人アンドリュー・ドミニクによる脚本をドミニク自身が監督して映画化。

ジェシー・ジェームズと言えばビリー・ザ・キッドと並び西部開拓時代の伝説のアウトロー。働いた悪事に比べ何故だか大衆には人気があり、後世に名を残すダークヒーローとなるところも共通している。

もっともこの手の話は、英雄のいない時代に英雄の出現を望む大衆(あるいはそれを利用した作家・記者)が生み出した現実と幻想が融合した〝作られた英雄〟であることが多い。

彼もまた南北戦争に敗れた南部の人々の行き場のない鬱積した気持ちが積み重なって生まれた〝抵抗の象徴〟なのかもしれない。

西部開拓時代を太く短く生き〝伝説となった男〟と彼を裏切り背後から撃った〝名も無き男〟の最期を郷愁や詩情たっぷりに描いた。俳優陣ではベン・アフレックの弟で、本作で〝撃った男〟の役どころを快演してアカデミー助演男優賞にノミネートされたケイシー・アフレックの演技が出色。撮影当時既に30代であったが、複雑に心が揺れ動く19歳を違和感なく演じた。

また、本作と「ノーカントリー」で第80回アカデミー賞で撮影賞にWノミネートされた名手、ロジャー・ディーキンスによる映像が圧倒的に美しい。

ただし160分と長尺なのとナレーションによる回顧録風の語り口は、あまり好みでは無く説明過多に感じられた。

現実の世界では殺されたジェシー・ジェームズが主役で、彼は後世まで名を残す一方、殺した側のロバート・フォードのことは、ほとんどの人が名前すら知らない。

だが映画では、後半から主役がロバートに入れ替わる。そうこの映画は、アメリカでは誰もが知る伝説のアウトローのジェシー・ジェームズを撃った男〝臆病者のロバート・フォード〟の数奇な運命の物語なのだ。