ちょげみ

チャーリーとチョコレート工場のちょげみのレビュー・感想・評価

4.2
《あらすじ》
世界一のチョコレート工場として名を馳せていながらもその一切が謎に包まれていたウォンカの工場の主であるウィリー・ウォンカがある声明を発表した。
曰く「ウォンカのチョコの包み紙の中に工場見学へと通じるゴールドチケットを5枚紛れ込ませた。幸運な5人の子供達を工場に招待しよう。」と。


《感想》
子供の頃に金曜ロードショーで毎年のように上映されていた「チャーリーとチョコレート工場」。

チョコレート工場のイメージには全くそぐわないカオスな世界と皮肉に溢れたテーマソング、キャラが立ちすぎている子供たちなど、1度目にしたら脳裏に焼きついて離れないこと請負いの印象的なマテリアルが矢継ぎ早に繰り出される。

視覚的効果だけども十分楽しめる映画だけれども、やはり世代を超えて楽しまれる所以はその視覚的魅力もさることながらテーマ性というのが老若男女問わず心に刺さるものだから、ということが大きいのかもしれない。


で、その本作のテーマが何なのかというと、「幸せになるために必要なものは結局、家族との絆だよ」ということだと思う。

本作で登場するメインキャラクター達、ゴールドチケットを手にして工場見学にやってきた子供達とその親は、人間が欲しいと思うものを在らん限りに手にしている人達だ。
お金とか才能とか地位とか。
しかし、全てを持っている人達は、それゆえに魔道に墜ちやすく、ウォンカの工場案内で早々に脱落することになってしまう。

ある意味ではウォンカが全権を握っている工場は彼の創造した世界であり、また、彼はその世界の神であるということなのかな。
だから工場案内は神が課す試練と言って良いものであり、工場内でのルールを破り罪を犯した者にはお帰り願う仕組みになっている。

犯す罪というのはおそらく七つの大罪に準えられている。
『傲慢』『強欲』『嫉妬』『憤怒』『色欲』『暴食』『怠惰』
これら7つの罪の内どれかを犯せば椅子取りゲームからは脱落することになっているということなのかもしれない。
(もっとも、七つの大罪というのは罪そのものであるというよりも、人間を罪に導く可能性があるとみなされてきた欲望や感情のことを言うらしい。)



それで厳正なる審査の結果チャーリーが生き残りご褒美を手にするわけだが、ここで終わらないのがこの映画のいいところ。


チャーリーがご褒美を手にいれて、大団円で結末を迎えるというわけだけではなく、ウォンカも救われるエンディングにもなっている。

彼は幼少期に厳格なる歯科医の父によってお菓子を食べることを禁止させられていたというトラウマを抱えていた。
無意識に押さえ込んでいた願望は大人になるにつれて解放され、チョコレート工場という形に結実したのであろう。
(完成形が決まっていて、無機質で整然としている歯科室⇄雑然としていて、全ての夢と願望を詰め込んだカオスワールドであるチョコレート工場)

そんな子供の頃のトラウマに向き合うために、チャーリーに連れられて父に仕事場に向かい、無事和解を果たすことに成功する。

先ほどの例に照らし合わせて考えるのならば、ウォンカが犯していた罪は「向き会わなければならないものから目を逸らし、現実逃避し続けた故の『怠惰』」ということになるのかな。
結局、自分にとってのユートピアを作り上げ、その中にこもって暮らしていたウォンカが欲しかったのは、自分の殻を破ってくれる他人だったのでしょう。


そんなテーマ性を持って本作だからこそ、時代を超えて観客のハートをヒットし続けているのであろうと思います。
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