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旋風の中に馬を進めろのhasseのレビュー・感想・評価

旋風の中に馬を進めろ(1965年製作の映画)
4.3
演出5
演技3
脚本5
撮影5
音楽4
技術4
好み4
インスピレーション4

鑑賞理由…ただただタイトルがカッコ良すぎるので気になって。

モンテ・ヘルマン監督、ジャック・ニコルソン脚本の西部劇。典型的な勧善懲悪型ではなく、「暴力を受けた者が転じて別の者へ暴力を働く」という暴力の連鎖を描いた、ニヒルなテイストの現代的なドラマとなっている。

自警団らが、ならず者と見誤ったカウボーイトリオを追い詰め、行き場を失った彼らは一般人の家に転がり込む。彼らは一宿一飯を要求しながらも、紳士的態度は崩さない。だが、自警団らに居場所がバレると、協力した一家の主を射殺して逃亡する。公権力に則り問答無用で銃撃してくる自警団という強者に敗れた弱者(カウボーイら)は、復讐するのではなく、自分らもさらに下の弱者(一般人)の命を奪うという、強者から弱者への暴力のバトンリレーが克明に描かれていく様は、2023年現在でもリアルに通用する作品となっている。

農場経営にでも転身したいと話すトリオ。移動生活から定住生活への転換によって富を蓄え安定収入を得られるが、定住すること、富(資源)を持つことは、この時代のアメリカでは移動生活者による暴力の餌食になりうることが示唆されている。

カウボーイ=強きヒーロー図式の崩壊は、イーストウッド『許されざる者』初出なのだと思っていたが、全然もっと前にあった。

冒頭のならず者5人が通りがかりの馬車を襲撃するシーンが非常に洗練されている。狼のように狙いを定める5人組の様子(微妙に息の揃わない感じもリアル)、急襲、そして馬車を取り囲んで馬で闊歩するやや引きのショットがカッコいい。
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