二瓶ちゃん

世界を賭ける恋の二瓶ちゃんのレビュー・感想・評価

世界を賭ける恋(1959年製作の映画)
3.3
武者小路実篤の「愛と死」を読んだので今作が気になり鑑賞。

日活。

まぁ、文字と映像なんだからだいぶ景色が違うのは仕方ないのか。

村岡と野々村は原作では作家なんだけど、ここでは建築家。そしてそれに伴ってなのか、村岡の滞在先がパリからストックホルムに変更。さらにそこまでの交通手段は船ではなく飛行機。お金かかってるなぁ。あとヒロインである夏子がお転婆娘みたいになるのはわかるけど、なんか繊細さが足りなかったかも。兄を前に婚約や恋愛の話を自重しないし。明朗さはわかったんだけど、だったら兄のキャラをもう少し立ててほしかった。夏子の病気が流行性感冒ではなく、結核なのも違いだと思う。

当時としてはこれでいただけたのかもしれないけど、ちょっと個人的にはセリフを言うことに徹していて、演技という感じがしなかった。失礼になるけど、スター俳優を起用した商業目的の映画のように感じてしまった。原作を読んでいたから流れを知っていたのもあって、安っぽい物語に感じてしまった。眠くなってしまった。

まぁ原作の方も語るのであれば一言で語れるような話ではあるからなぁ。

ま、原作と同じで、帰ってきてからの展開や人物の発言には学べるところが多い。むしろ物語の後半からが本番。旅行パートはまぁ冗長。それも原作と同じ。あと長すぎる手紙も同じ。やり取りの甘すぎる会話も原作を大切にしていると思う。冗談と本音の間の表面を上滑りするような会話は、見ていてこっちもニマッとしてしまう部分もあった。

映像への改変に伴って、映えるような形で色々が書き換えられたんだろうか。

物語の中身を知っているからか、等身大に映像化したんだなと思ったけど、蛇足に思える要素や展開が多かったり、お金はかかっているんだろうけど、全編的に退屈だったので厳しめのこの評価。

愛と死では、直球すぎて内容が想像できてしまうのでタイトルの改変に関してはわかる気もする。

この時代の映画の女の人の声ってみんな同じに聞こえる。話し方を揃えてるのかと感じるほど。夏子の宙返りシーンが2回しかなかった。文化祭の出し物に出た夏子が披露するのは宙返りを交えた小芝居からただの歌に変更。これが本作のメインテーマだったのか。

いずれにせよ原作の方が好きですかねぇ。よくは知らないけど海外のものに関する描写や説明もあった気がしたから。

宙返りってただそれだけだと思ったけど開脚するとなんか生々しくて嫌だったな。原作の段階だと、脚くっつけてやってるのかと思った。

え、日本映画初の海外ロケ?本当に?日活が復活して数年の作品ではあったらしいんだけど。