皿鉢小鉢てんりしんり

荒野の処刑の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

荒野の処刑(1975年製作の映画)
3.7
これが中々の掘り出し物。ウェットな描写が若干しつこいが、色々と奇妙なバランスで成り立っており、マンネリを回避している。
特に、男しかいない奇妙な雪の町で子どもが産まれるくだりはすごい。子どもの性別や目の色が何かで賭けをして騒ぎ立てる男たち、それらを長回しで撮っていくと、女の絶叫でみな静まり返り、産声が響く。それまで騒ぎ立てていた男がみな丁寧に整列して、産まれた赤ん坊を見る。賭けをやるはずだった金を、子どもの寄付にどんどん入れていく……このシーンの詩情といい美しさといい、はっきり言ってアンゲロプロスに匹敵すると思う。
黒人の仲間が完全に狂ってしまう描写も切なくて(モレルの発明みたいなことを言いはじめる)、主人公たちに置き去りにされるのを、板切れの間から覗くような不思議な主観ショットで描くのも味わい深い。
彼が持ってきた肉が、死んだ仲間のケツの肉を抉りとったものだったことが分かるシーンのあまりに無造作なショック描写もあり、趣きがあるんだかないんだかよく分からない映画になっている。
佐川一政も、殺した女子大生は確かケツの肉から食べ始めた、と本人が語っていたような気がするので、結構正しい描写なのかもしれない。