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荒野の処刑のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

荒野の処刑(1975年製作の映画)
3.7
フルチ先生のロードムービー+マカロニ・ウェスタン。

英題、Le avventure di Giacomo Casanova
ジャコモ・カサノヴァの冒険(又はカサノヴァの罪)撮影監督はマリオ・バーヴァ

町ぐるみの粛清から辛うじて逃走してきたポーカー詐欺師のスタビー、娼婦(妊婦)のバニー、アル中のグラム、墓掘り人のバッド。
粗末な馬車で荒野を彷徨うことに。
十分な水や食料もないまま移動する3人。
道中でハンターのチャコが加わり、彼の狩猟の腕前に感心した彼らだったが、チャコの本性は盗賊、バニーをレイプしたあと3人を荒野に置き去りにしていく。

スタビー役はファビオ・テスティ。 
(ジャケのバンダナの人では非ず)
濃い顔立ちのイケメン、めたくそ睫毛が镸い、甘いマスク、均整のとれた体、美しい胸板。
カサノヴァの名前を背負っても無問題。

気障な優男の詐欺師でしかないスタビー。
3人の非力な者達が連帯してゆく前半の展開は擬似家族の形成のそれ。
しかしアル中のグラムは撃たれた傷が元で死亡、墓掘り人のバッドは現実に耐えきれず発狂してしまう。
後半は牧師に連れられて身を寄せた、男しか居ない、ならず者達の村にてバニーが出産を迎える。
ここでは擬似家族を形成している村に受け入れられ一員になるという形に。
赤ん坊は無事に産まれ、だけどバニーは産褥で死亡。
村の男達から祝福されつつスタビーは再び、ひとり荒野へ旅に出たその先でチャコと巡り会い、そこで"復讐"を遂行する。
チャラい優男が過酷な経験を通してガンマンに成長する姿でもあったり。
(そしてラストに犬登場の小技が良い)

外連味のある銃撃戦のシーンが無いのに、生きたまま皮を剥ぐ、銃弾を摘出する、嫌な奴予感しかないお肉、臀部が切り取られた死体など、西部劇らしからぬ箇所の念入り描写はフルチ先生だからか。

各々の役割分担がはっきりしているので、概ね(???)となりがちなフルチ先生の作品の中で異色な分かりやすさがある作品。

スタビーは詐欺師なだけあって寝込みを襲撃して、軽く甚振ってからとどめを刺すという、ガンマンらしからぬ手段で復讐を遂げるところ、何か"らしい"なと思う。
そもチャコも卑劣な手段で彼らを嵌めたので、悪行がそのまま返ってきたようなもんだ😅  

ホラーじゃないけど、途中の文脈にちょいちょいホラーが交じるフルチ先生の西部劇、良かったです。