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荒野の処刑のrollinのレビュー・感想・評価

荒野の処刑(1975年製作の映画)
4.7
『サンゲリア』や『地獄の門』で知られるイタリアン・ゴア・ファーザー、ルシオ・フルチ監督の便宜上マカロニウエスタンに分類される傑作でござい。『ミスター・ノーボディ』より2年後の公開と言えばこの作品の置かれた状況がよく分かるね。

あらすじは、ひょんな事から共に旅をすることになったトランプ詐欺師と娼婦、墓掘り人と呑んだくれの4人がサンドシティーという街を目指すお話、と言えば簡単やけど、既に法と秩序の破綻した世界で悪党に抗う術を持たない彼らはひたすらな目に遭います。
原題は『四人の黙示録』。確かにベルイマン監督の『第七の封印』のウエスタン版と言えば分かり易いかもしれまへん。

牧歌的な平穏タイムをぶち壊して登場するのは、我が心のトーマス・ミリアン演じるハンターのチャコ!ポスターを見ればお分かりの通り、このチャコのビジュアルを某カリブの海賊にて某俳優が丸パクリしたのはあまりにも有名。正統派悪役のトーマス・ミリアンはあまり好かんけど、キャラ立ちの素晴らしさは否定のしようがない。
キャラ立ちと言えば、ヒロインのリン・フレデリックの完成したドリュー・バリモアの様な神懸かった美しさは本当に!全映画ファンに観て欲しいです。

フルチ監督十八番の人体破壊やカニバリズムはやや控えめ。何と本作はフルチ監督らしからぬ超感動作に仕上がっていて、リン・フレデリックの宗教絵画級の美しさと相対する暴力、あまりの惨状に壊れていく人の心、そしてそんな世界にも希望を見出す人間の圧倒的な善意が描かれます。

アングルに凝った撮影や、カメラを正面に見据えて語りかけてくるテーマ、髭を剃る、という行為だけで法を超えた人間の絶対的な倫理観を演出する手腕は見事!
そして始めは単なる詐欺師だったファビオ・テスティ演じる主人公が、魂の変遷を経て最高のガンマンのシルエットに変貌していくラストには静かな胸の高鳴りを覚えるです。
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