Mikiyoshi1986

悲しみよこんにちはのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

悲しみよこんにちは(1957年製作の映画)
3.9
一世を風靡したアメリカの女優ジーン・セバーグが変わり果てた姿で発見されてから、今日で38年が経ちます。享年40歳。

特に晩年は数奇な生涯を送ったセバーグですが、やはり彼女の一番輝かしい時代は50年代がピークだったと云えるでしょう。

フランスの女流作家フランソワーズ・サガンが若干18歳で発表し、世界的ベストセラーとなった処女作「悲しみよこんにちは」をオットー・プレミンジャー監督が3年後にハリウッド映画化。

当時18歳だったセバーグが大人びた17歳の少女セシルを演じ、その瑞々しい美貌と印象的なベリーショートは「セシルカット」ブームを巻き起こすことに。

プレイボーイの父レイモンと娘セシルが南仏リビエラで夏の休暇を過ごすうち、
招待された亡き母の友人アンヌが父と急接近することで、それまで気楽だった生活にも変化が生じてゆきます。
聡明で気品高いアンヌに父親が影響されてゆく不安と嫉妬。
また自身の怠惰を指摘されて逆上し、彼女の支配的態度に反抗するセシルの画策は、やがて取り返しのつかぬ不幸を招くことへ。

大人でもあり子供でもある微妙な年頃の機敏を、デヴィッド・ニーヴン&デボラ・カーという名優達を前にしても物怖じすることなく、表情豊かに演じ上げてみせたセバーグの魅力。
彼女の肢体とその衣裳は眩しいほどにシネマスコープのスクリーンを映えさせます。
自責の念で以後色彩を欠くシーンも、(プレミンジャーのしごきもあってか)常に憂いと悲しみを漂わせた演技で見事"心の壁"を表現。

コスチューム等もジバンシー、カルティエ、エルメスといった一流ブランドが名を連ね、劇中には国際的な日本人画家・菅井汲の絵画を装飾。
そしてタイトルデザインはソール・バスによるもの。

本作に心底感激したゴダールはこの2年後、自身の長編デビュー作に後の妻となるアンナ・カリーナを出演させようとしますが結果断られ、
アメリカの新星セバーグを起用したことで「勝手にしやがれ」は映画史にヌーヴェルヴァーグの創世を告げる大傑作となり得たのです。
また「気狂いピエロ」では本編を思わせるような南仏の海や美しい松林が登場したり。

ジーン・セバーグの美貌は今もスクリーンの中で輝きを放ち、時代を越えて我々を魅了し続けています。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986