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トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーンのふるっとのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

前半は支離滅裂な狂人とのやり取りなので若干退屈なのだが、終わってみれば意味のあるシーンも多くて感慨深い。

ハムレットが狂人を演じていた話が、出てくるからカットショウは無意識にでも演じていたんだろな。

時折ある、神や狂人の話は興味深い。
「我々は陸に上がった魚だ」
「悪は狂気の産物ではない…狂気が悪の産物なのだ」など、
頭に地獄を飼っている人間でないと出ないセリフだなと鑑賞後に想う。

ケーンとカットショウの問答が物語の核心をついていて頭に残しておきたい。

カットショウの
「神はいない、でも悪魔はいる」に対して
「原罪のせいだ」とするケーン。
それに対し「それで原爆を正当化するのか」
とカットショウ。
原罪のせいにして思考停止するなと言ってくれている。

ヒョウと羊が同居している。
観客は不思議がっているが
ヒョウは見えないところで羊を殺しまくっているのだ。という話は
大衆が無意識に誰かを犠牲にして安寧を得ているといいたいのかな。
大衆に見える範囲では、善と悪が拮抗しているが、その裏で多大な善が犠牲になっている?

カットショウは人が苦しむことについて問い詰める。
「人間として成長するからか?
そうでないと、ただの話す動物でしかないからな!」
「何故神は救いに来ない?」

ケーンは
「原罪のせいかも」
「神は人に干渉しない」
と盲目的な回答をするが
その後の回答が、ケーンの想いになっていて

「神に奇跡を求めるな
人の善意こそが神であり
人が進化すれば、理想的な社会になるはずだ。」

「悪がいるから神が死んだのではなく
善があるから神もいると信じろ
愛がなければ利己的な生き物になってるはずだと。」

このあと、カットショウに実例を出せと言われ、答えられないケーンだが

ラストで、バーでの悪魔的行為に絶望して自殺かと思われた行動が
カットショウのショック療法のために犠牲であることと、死後の世界から合図を送っていることで、
見事応えてくれる。

ショック療法って
「カッコーの巣の上で」を連想しちゃってたけど、優しいショック療法もあるんだ。

バーの暴走族は、袖なし革ジャンにアイシャドウでガタイがいいので悪魔を思わせるいい作りだった。
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