くわまんG

トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーンのくわまんGのレビュー・感想・評価

5.0
「ひとは、受け止めきれない量のストレスがかかると、狂人にならなければ耐えられなくなる。では、その時彼は狂人を演じているだけなのか、あるいは狂人になってしまっているのか。また、この二択に答えを出すことに意味はあるのか。」
「人の世はいつも、突き詰めれば悪意が残る。反論できるか?もしできないのなら、私たちは本当に孤独だ。」
「もう時間がない。だが君に教えたい。一つの例が示されれば、君を救えるかもしれない。」

最終局面でカーンは、壊れてしまった自分を理解し、壊れてしまったカットショーを理解した。最深部での共感した自分だからこそ、彼にできる最高のことを、(狂気と言っていいほど)冷静に見出した。

天から降りてきたかのような台詞を訥々と唱えるステイシー・キーチの怪演は、『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーに匹敵する、神がかり領域に達していた。

ボロボロに傷みきった人の心に、“永遠の幸せ”だ“神の愛”だ胡散臭いお説教は届かなくとも、カーンの生き様なら届くんじゃなかろうか。傷んだ(あるいは痛みを知った)心だからこそ救える、傷んだ心があるのだから。

真剣に話を聞き、可能な限り共感し、共感できても感情移入はしない。仕事に対する姿勢を大きく変えてくれた、珠玉のレスキュームービー。