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ダルフール・ウォー 熱砂の虐殺のHKのレビュー・感想・評価

4.1
『アローン・イン・ザ・ダーク』『ブラッドレイン』などのウーヴェ・ボル監督による戦争映画。キャストはクリスタナ・ローケン、デヴィッド・オハラ、ノア・ダンビーなどなど

スーダンのダルフール地方、ここではアラブ系と非アラブ系の民族紛争、通称ダルフール戦争が勃発していた。非アラブ系の黒人が多くを占める村にアフリカ連合軍の兵士と国際ジャーナリストが監視と取材の兼ね合いに訪れるが、そこにアラブ系の武装過激派のジャンジャヴィードが押し寄せる…

監督はB級映画ばかり撮っていて、ゲーム原作の映画を沢山撮っているのですが、あまりの原作レイプぷりで製作者からも嫌われてしまうほどの糞映画を輩出してしまう方で、それでいて自分を叩いた批評家にボクシング勝負を挑むなどパンクな所が目立つ、映画秘宝が好みそうな人柄の監督である。

キャストになんと、『ターミネーター2』のジョンコナーを演じたエドワード・ファーロングが出てる。もう完全に小太りおじさんになっちゃていますがね。更にヒロインには『ターミネーター3』でT-X、女ターミネーターを演じたクリスタナ・ローケンが出てる。ターミネーター愛好家歓喜必死のキャスティングなので是非とも観てね。

まあ、アメリカの戦争映画ではよくあるバタ臭い要素はほとんどない。寧ろ『ソルジャーブルー』とか『激動の昭和史沖縄決戦』『イノセントボイス』に近しいとんでもない虐殺描写と人間の業を描いている深刻な映画なんですけどね。本当に見ていて久しぶりに叫びましたよ。感激しましたぜ。

実際、最近見た映画だと『ルートアイリッシュ』でもダルフールの戦いというのは過酷なものであるというような台詞が出てくるんで、それほどまでにこのアラブ側の虐殺というのは今に続くほどに深刻な物なのです。アラブ側は復讐戦として正義を掲げてやっているために、最早何も躊躇することなく村民を殺していくのですね。そこが素晴らしかったと思いますね。

ストーリーラインは至って単純、前半はアフリカ連合軍の兵士たちに連れられジープに乗ってやってきたクルーとジャーナリストたちが、とあるダルフールの非アラブ系の村に訪問し、そこでどんなことが起こっているかを取材する。

そこでは村の人たち、特に子供たちがサッカーをして遊んでいたりと、瑞々しく生き生きと遊んで生活を営んでいる描写を入れている訳です。ここはもろ、『イノセントボイス』などでもやってましたね。

あちらではもうちょっと物語構成上、その対比の反復を繰り返すことで日常と非日常の暗転によってアクションを起こすことを狙っていましたが、この映画では前半はひたすら、ドキュメンタリータッチで彼らの瑞々しい生活模様を描いてるわけです。

そこでは、他の村も、何一つ国防軍やら政府からの保護を受けることなく、無残に村民が皆殺しにされたという悲痛な声を聴きます。レイプされて子供を孕んでしまった女性もいるなど、彼らの切実な訴えもドキュメンタリータッチに描かれます。

そこから、物語中盤、取材を終えて現地から帰ろうとした彼らですが、帰る途中でアラブの武装過激派、ジャジャンヴィードがこの村を襲撃しようと襲いかかってくるわけですね。

ここからの虐殺ぷりは…個人的には『ソルジャーブルー』よりもド派手であると思いましたよ。ただ拷問のようなものはあまりせずに、いやそれでも強姦したり非人道的な行為はしますが、視覚的にあちらよりもショッキングな描写はそこまでなかったような。

ただ『ソルジャーブルー』と同じく老若男女、赤ん坊だって容赦なくぶっ殺すので、最早世紀末と言いますか、マッドマックスの世界観のような地獄絵図を体感することはできますね。

そこで村民が逃げ回り、機関銃の音がして何度もショットが変わる演出は『ブラックホークダウン』にも近しいカオスの空間を見出すことができますが、あちらに比べると盛り上がりがちょっと足りないかな。

途中、正義感で村民を救おうとするジャーナリストが、同じく正義感に燃えていた連合軍兵士に銃を渡され、3人ほどで村に戻って応戦するのですが…、まあ3人じゃ無理もないわなと言う感じ。

劇中、ジャジャンヴィードのリーダー格みたいな輩が「子供は皆殺しにしろ!そうしないと復讐される!そういう要因は全員殺せ!」みたいなこといって子供も全員家に押しやって焼き殺してしまう所は『炎628』を思い起こしましたよ。素晴らしかったですね。

もう、終盤はひたすら非人道的に焼き殺すことを徹底的にしているために見ているこっちも、気分が昂揚してきましたよ。最後の空しい村の惨状を確認して終わるしめも見事でしたね。

ただ唯一残念だったのは、アクション要素高めに『プライベートライアン』味のFPS要素を出そうとしたのか、終始カメラがぐらぐらしていたのが見づらかったですね。それさえ改善されて、もうちょっと露悪的になっていれば、もっと評価高かったかもしれませんね。

いずれにしても見れて良かったと思います。あまりマーク数少ないですが、こういうの隠れた名作とでもいうのでしょうね。エドワード・ファーロングもあまり目立たないけど良いキャラしてるので見たい人は見てください。
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