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君よ憤怒の河を渉れのbackpackerのレビュー・感想・評価

君よ憤怒の河を渉れ(1976年製作の映画)
3.0
「男にはね、死に向かって飛ぶことが必要な時もあるんだ。杜丘君は今賭けているんだ」
「そうなんです。僕はこの賭けをやらなければ、生きてる意味がないんだ」


監督にミスター超大作の佐藤純彌、主演に『新幹線大爆破』でも共に仕事をした高倉健を据えて製作された、151分の大作映画。
本作は"文革"で疲弊した直後の中国で、「無実の罪で投獄された」主人公という設定が、まさに自分たちの現状とマッチしたことで、空前の大ヒット。8億人とか10億人とか言われる人数の観客動員を記録しています。
この"中国での絶大な人気"というエピソードは今も有名で、2017年には、香港映画界の巨匠ジョン・ウー監督が、チャン・ハンユーと福山雅治を主演に『マンハント(追捕)』としてリメイクしています。

本作の後、佐藤純彌監督が日中合作系超大作映画をいくつも作るきっかけとなり、高倉健も中国でのスターとなる道を開きました(『単騎、千里を走る。』への出演等も、本作の影響を受けてのこと)。

本作といえばコレ!というぐらい有名なのが、新宿駅南口から西口の近辺にかけて、馬を何十頭も暴走させる、圧巻の逃走シーンです。
競走馬が解き放たれ、アスファルトの上を疾走し、蹄鉄が火花を上げ、コーナーを曲がりきれず転倒……と、このシーンだけでも一見の価値ありです。
ただ、アスファルトの上を疾走したり、そのうえ転倒しちゃった馬達がどうなってしまったのかだけが気がかり。脚や身体を痛めてないといいんですが。
このシーン、昔はゲリラ撮影で行われたと聞きましたが、実際は警察了承済みだったとのこと。ただ、撮影中に馬の逃走があったらしく、撮影許可をだした警視庁関係者がその煽りを食らったとかなんとか……。

手に汗握る展開ながら、どこか気の抜けたテーマ曲、熊・馬・セスナの珍道中。
破天荒でミスマッチで荒唐無稽が連続する長〜い上映時間にノックアウトされ、疲労困憊になって鑑賞を終えること請け合いです。
ちなみに、私が本作を初めて鑑賞したのは高校生のとき。高倉健映画にハマって、連日何作も連続鑑賞していたときです。今改めて鑑賞したところ、かなり疲れてしまいました。
高校時代は体力があったんだなぁと、ひょんなところで気付かされました。

なんとも言葉にならないパワフルさを持った映画のため、何故か不思議とまたみたいなぁなんて思ったりするのですが、次に見るのはまた何年も時間を空けてになることでしょう。
『マンハント』を見ていて本作を見ていない方、高倉健主演のトンデモ映画が見たい人、熊・馬・セスナに興味がある人、健さんが薬で強制的にアッパラパーにさせられる終盤が気になる人、要チェックですよ!


「終わったの?」
「いや、終わりはないさ」
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