えそじま

湖のランスロのえそじまのレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
4.7
聖杯伝説の騎士達を題材にしながら、当然のごとくスペクタクルもオカルティズムも寄せ付けない。甲冑を着飾る人間と馬の足音による断片化と再結合、質量以上の重みとリズムを生み出す鉄の交響曲。しかもそれは堅固な図式を出発点にしながらも、撮影を経てより直感的に、より即興的に形成されていくという。忠義と不忠のあいだで、潔白と愛のあいだで引き裂かれ、運命という超機械によって押し潰されるランスロ(聖杯という神に拒絶され手ぶらで帰ってきた英雄)の心境、内面の冒険が全ての騎士達の運命もろとも歯車に巻き込んでいく。緑が排除された無味乾燥な城内と躍動的な外の世界の対比、鳥の鳴き声が、木々の囁きが、馬の視線が映像の時代錯誤を超えて魂を突き動かす原動力となる。


「神秘主義者は不道徳な存在に直接変形しうる。そして最も邪悪な、最も甘美な罪に赴くこともできるのだ、熱すぎる涙を流しつつ」(ポールヴァレリー『残肴集(アナレクタ)』 寺田透訳)
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