アニマル泉

湖のランスロのアニマル泉のレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
4.5
ブレッソンの念願の企画だという。「布」の映画だ。はためく旗、置き忘れたスカーフ、テントの布、全編にわたり布が官能的である。冒頭はいきなり首を刎ねるアクション、森の中の馬の疾走だ。ブレッソンらしくないオンの直接的な殺陣、森の中を馬を走らせるアクションはかなり高度な技術だ。本作は見事な「森」の映画である。
ブレッソンの主題である「足」「扉」「影」はもちろん堪能出来る。「手を繋ぐ」エロスはブレッソンの十八番だ。動物もブレッソンの重要な主題だが本作では馬、特に馬の目がアップで強調される。
本作は時代劇なので武具と甲冑も興味深い。 
ブレッソンは繊細だ。夜、ランスローが夜回りの準備をしているモルドに和解を求めに来る場面、最初は外観でテント越しのランプが浮かび、ランスローが入って来ると警戒するモルドが灯りを消す、そして和解を求めて差し出されたランスロの手だけがスポットで浮かびあがる。何という繊細な光の設計!唸るしかない。
王妃は横顔のプロフィールショットが多い。
ブレッソンの画面の切り取りとオフは本当に特異だである。
競技の試合はひたすら馬の足、アクションは観客席のオフで見せない
ラストの戦闘も無人の馬が走るばかりで既に終わっている。ランスローが止めを刺されるショットはない。静かに累々とした死体の中で埋もれる。
物語、アクションには興味がないのだろう。そのあとの人間を描きたいのかな。
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