ミシンそば

湖のランスロのミシンそばのレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
3.8
70年代にブレッソンが手掛けた、中世の吟遊詩人クレティアン・ド・トロワ原作のアーサー王伝説モノ。
迫力に欠けるのは製作年代的に仕方ないとして唐突で抽象的な円卓の騎士らの蛮行と虐殺(首が飛び、わざとらしい血しぶきが飛び散る)から始まるところには面食らった。

TYPE-MOON作品(って言うかFate)とかの影響で、アーサー王伝説への解像度とか、各キャラの役割と人物像とかは分かっているつもりではいたが、ブレッソンの描き方が大分客観的で、尺に収めるためにカットすべきところはかなりバッサリカットしている印象も受けたため「アレ?このキャラこう死んだっけ?」ってなる場面とかも多少はあった。
まあどちらにせよ、時代がかった感じの台詞諸々も含めて、予備知識がある程度ないと楽しむことができない作品であることは否定できない。
実際、円卓の騎士の聖杯探索とか、Fateからあんまり入って来ない部分は自分も知らんし。

プロの役者が嫌いなブレッソンがランスロット役に抜擢したのは本業が画家のリュック・シモンで、不義の関係にあたるグィネヴィア王妃役はアメリカ人のローラ・デューク・コンドミナス。
髪飾り込みで、ではあるが本当に美しく、グィネヴィア然とした気品を頂く佇まいで、よくぞ発掘したなと偉そうなことを言いたい気分になる。

客観的な視点に終始し、味わいこそあっさり。
ガウェインやその兄弟、およびアーサー王伝説の悪役と言っていい立ち位置のモルドレッドらのキャラクター像も、時代相応の古さも感じはする(それらのキャラクター、特にガウェインはランスロットと言う五条悟みたいな分かりやすい最強キャラの引き立て役臭を、フランス発のアーサー王伝説モノに出て来たら常に漂わせている印象あるから)。

だが、それはそれとして伝説が有する非情さは伝わる仕上がりで、サクッと観れるあっさりさの中にも重さが宿っていた。