似太郎

パーク・ロウの似太郎のレビュー・感想・評価

パーク・ロウ(1952年製作の映画)
4.9
【無秩序(アノミー)と化した世界で】

20世紀初頭のアメリカに於けるブン屋の話で、豪華絢爛なセットと美術がB級映画には似つかないゴージャス感。作り手の映画魂を其処彼処に感じる。

ここでも鬼才・サミュエル・フラーは突発的に起こる暴力を生々しく撮るために長回しを多用しあくまでドキュメンタリー映画のように作り上げている。随所に施されたジャーナリズム、マスメディア批判も忘れてはいない。

主演のジーン・エヴァンス(『鬼軍曹ザック』の人!)が男臭くて格好良いので、ある意味マフィア映画のような風格すら漂っている点が肝心。彼と対峙する新聞社の女社長メアリー・ウェルチも魅力的だった。

暴力をそのまま美化せず赤裸々に描くアプローチは、マーティン・スコセッシにも多大なる影響を与えた。(フィルムアート社『スコセッシ・オン・スコセッシ/私はキャメラの横で死ぬだろう』から引用)

B級映画だからこそ成し得た表現かも知れない「暴力」の生々しさと迫真性がある。ヌーヴェルヴァーグで評価されたのも頷ける極めてインデペンデントな作風で既成のハリウッド映画に飽きている人に是非ともオススメしたいブン屋、報道、ジャーナリズム映画の傑作。またアメリカの裏面史を知りたい人には打ってつけなB級映画と言える。
似太郎

似太郎