TAK44マグナム

悪魔のえじき/ブルータル・デビル・プロジェクトのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

4.0
とどのつまり、バカ!


イッテンバッハ、シュリンゲンジーフ、ブットゲライトと並んで「ドイツの変態四天王」と称されるアンドレアス・シュナース監督によるスーパーヴァイオレンス!

何だか知りませんが、どっかの孤島で3人の男が謎の集団にブチ殺され、その記録映像が流れ着いたので再生したところ「こんなのあり得ないから作り物に違いない!」と無視されたっていう嘘臭さ100%な説明から始まる一大バカ絵巻であります!
そりゃそうだよね、作り物だもの!完全に作ってますよ、これは!
そこかしこで白とびさせたりして記録映像ぽくもしていますが、誰が撮っているんだ状態だし!

と言うわけでバカは休み休みにしろって感じでフィクション決定。果てしなく安っぽいビデオ撮りにピーヒョロなBGMをのっけて、とんでもなくショボいバトルが繰り広げられます。
雰囲気としては世紀末の暴力ワールドで、キチガイ達がヤンヤヤンヤと学芸会で騒いでいる印象。
案外、「ターボキッド」なんて、このへんのバカ映画から影響を受けているんじゃないのかな?
後半のしょうもないバトルとかだけなら、井口昇みたいな匂いもしますね。


厚紙で作ったようなヘロヘロの仮面や盾を装備したオッサンたちが「うおーっ!うおーっ!」と、まるでどこぞの居酒屋の自己啓発系な開店準備みたいなノリ。
なんじゃこりゃ!
どうやらオッサンたちは「マイスター」と呼ばれる、東映特撮に出てきそうなコスチュームを着たジジィとその息子(監督が要らぬ熱演!)を崇拝する共同体らしく、日夜、反逆分子を取っ捕まえては処刑しているみたいです。
何を目的に寄り集まってキャンプ張ってるのか皆目分かりませんが、たぶんシュナース監督自身考えてもいないのではなかろうか。

とにかくマイスターの機嫌次第で部下も簡単に処刑しちゃうので、どうしてこの共同体が成り立っているのかサッパリ理解できません。
みんな、逃げろよ!
なんで喜んで死を受け入れてるんだよ!?
おまえらは人民寺院か!


〜この先はラストまで分かっても良いように書いてしまったので、万が一これを観ようと思っている奇特な方がいらっしゃいましたら、観てから読んでくださいまし〜!〜


とりあえずこの映画、シュナース監督の好きなモノを整合性を度外視して詰め込んだ、監督の夢の集合体みたいな感じなんですよね。
だから初めから最後まで支離滅裂なんですけれど、それが面白さを生んでいるのも事実。

まずはグロなんですが、どこからどう見ても作り物にしか見えない特殊効果やプロップを使って、あり得ない人体破壊を脈略もなく挿入してくるものだからたまりません。
まさに威風堂々。
「こんなのどう?すごいでしょ?」と、最高度に子供じみた感覚で、人体がいとも簡単にパカっと割れたり、ペラッとスライスされたり。
マイスター子飼いのキチガイドクターが脳みそをこねくり回したと思ったら自分が首チョンパとか!4人同時断頭の刑で首がゴロゴロ転がったり、爆弾で人体木っ端微塵!なんてのは当たり前で、そのうち感覚が麻痺してきます。
オケツからフックで引き裂いて背骨を引っこ抜くなんて荒技も飛び出しましてね。
ジャーマンゴアってこんなのばかりだよなぁ、狂ってるよなぁ!なんて思ったりして。
最高じゃないですか?
もっとやれ。

そしてグロとくれば、お次は当然エロじゃないですか。
しかし、若いおねーちゃんは連れてこれなかったのか、ちょっと熟したオバさん2人が裸にひん剥かれます。
1人は巨乳で、もう1人は貧乳という、そこはあらゆるニーズにお応えしようとするシュナース監督の人柄が垣間見得て大変よろしいですね。
でも、明らかにオバさんですが。
そんでもって、襲ってくるのが逞しさ溢れる男根ではなく、キチガイドクターが造ったというモンスターなのですが、何故かメッチャ小さい!
というか、オモチャの人形じゃないの、こいつ?!
そんな人形が巨乳に飛びついたりする地獄絵図!
誰得なのか全然わかりませんが、少なくとも色々な意味でマグナム的には得が無いエロでした。


ところで、本当にテキトーな映画なんですよ、これ。
なにしろ、最初に出てくる三人の男たちがてっきり主役なのかと思っていたら、中盤でアッサリと真っ二つにされて全滅しますからね。
たぶん、猟奇的なトーチャーホラーでもやったろうかと撮りだしたら、途中でジャッキーの映画でも観て感化されてアクションものをやりたくなっちゃったんじゃないかなと勝手に想像したんですけれど、唐突に出てきた新しい三人が主役の座を奪っちゃいます。
この三人はある程度動ける役者さんらしくて(あくまでも、ある程度ですが)、マイスター達とトロトロの格闘戦をやったりしますよ。
でも、一番主役っぽかったアジア系の兄ちゃん(敵から中華丼って呼ばれてる)が、これまたいきなり死亡!
何故かっていうと、最後の敵がマイスター親子なので、2対2にしたかったんでしょう。たぶん。
うーん、しかし残った2人は名前を覚える間もなかったから、こいつら何なんだ状態でしたけれどね。

で、この新主役三人組が相対するのが皆んな大好きゾンビだったりします。
そう、今度はゾンビですよ!
パンチ一発でゾンビの顔面が簡単に貫通!
どんだけ柔らかいのよ!
腐ってるから?

ゾンビがあっという間に全滅すると、お次はマイスターの秘密兵器が登場!
キチガイドクターの研究の結晶が今ここに!
その名も黒い悪魔部隊!
そう!日本の魂!忍者ですよ、ニンジャ!
N・I・N・J・A!!
こいつらがブルータルデビルなのか?!
敵がニンニンニンと忍者でくるなら、勿論こちらは男の必修科目であるカンフーで対抗です!
蛇拳まで炸裂するデタラメ具合にクラクラしてきますが、最強の忍者部隊のはずが割と簡単に首チョンパされて部隊は壊滅!
なんだったんだ、忍者!
しかし外人さんは本当に忍者好きだな。
それ当て込んで、オリラジの中田まで「これからはニンジャがくる!ニンジャにラップとダンスさせて売るぜ!」なんてラジオで息巻いていたけれど、なるほど売れそうな気もするよ。

忍者を退けた三人は「キャンプを潰してやる!」と、密かに共同体キャンプに近づき見張りを惨殺。
必殺のロケットランチャーやらマシンガンを奪って重武装化!
ここからはお待たせしました!と言わんばかりに「今度は戦争だ!」ってやつですよ!
まるでチャック・ノリスの映画を更に緩くしたような、臨場感があふれないコンバットバトルが展開されます!
ロケットランチャーに手榴弾が雨あられ、驚いたことにけっこう本格的に爆発します!
吹っ飛ぶ その他おおぜいの皆さん!
原始的な厚紙製の武器を振りかざして襲ってくる敵を近代兵器で蹴散らす様は、まるで「戦国自衛隊」のようじゃありませんか!
ドカーンドカーン!
バリバリバリ!
大量虐殺!ヒャッホーイ!
しかし、意外と危険そうなスタントシーンもあって、観ているこちらが思わずハラハラしちゃいますが、怪我とか無かったのでしょうか?
あったとしても撮影は続行しそうですが・・・

キチガイドクターも死に、一番主役ぽかったヤツも「もうお前も要らんわ」みたいな雑な憤死を遂げ、遂に最終決戦です!
よく知らん二人組VSマイスター親子の血戦の火蓋がきっておとされます!
とりあえず「手を組もうじゃないか」などと相手を懐柔しようとするマイスター息子。
まぁ、手下が全滅したんで勢いもなくなりますからね。
ヒューマンガス様なみの演説をぶちかましていたのが遠い過去のようで寂しいかぎりです。
はっきり言って、マイスター親子は特別強いわけではないので、どんどんと追い詰められてゆきます。
だがしかし!ここで最後の切り札をきるマイスター親子!
息子は「最強の空飛ぶギロチン使い」を、オヤジは「ホッケーマスクを被ったカギ爪野郎」をそれぞれ召喚!
うおー、どっかで見た事あるぞ!フライングギロチン!
ギューンギューン!と迫るギロチン!間一髪でよける男!
一方、ジェイソンもどきは「ヤツは死んだも同然!」とか何とか格好いいセリフを吐いたのも束の間、めちゃくちゃトロい動きをすぐに見切られ、グサグサグサグサと刺されて敢えなく死亡!
おまえは何しに出てきたんだ!

頼みの綱もバカばかりだったので万事休すのマイスター親子。
フルボッコにされ、挙げ句の果ては手榴弾で爆破四散!!
悪魔の共同体は壊滅し、島に平和が訪れたのでした。
ラストは、よく知らないうちに主役になっていた二人組が、キャッホーイ♪と嬉しそうにハイタッチして劇終です。
香港映画か!


非常に幼稚で、芸術のげの字も感じられない映画ですけれど、変に格式張った高尚な映画よりも、こういうバカだけどやりたい放題やっている映画を観る方が何かホッコリするんですよね。
気のせいかもしれませんが。
何にせよ、一本の中にこれだけのボンクラ要素を詰め込んだのも大したものですし、ある意味、夢のようなZ級じゃないでしょうか。
世界にはこんなの作っている大人もいるんですから、まだまだ捨てたものじゃありませんね!

あ、映画自体は「こういうのを解って観る物好き」以外の一般的な感性をお持ちの方には全くオススメ致しません。あしからず!


某動画サイトにて