猫脳髄

惨殺の古城の猫脳髄のレビュー・感想・評価

惨殺の古城(1965年製作の映画)
3.3
マックス・ハンターこと、マッシモ・プピッロによる世にも奇妙なマッチョ・ゴシック・ジャッロ。ジャッロ映画の起源がマリオ・バーヴァ「知りすぎた少女」(1963)にあるとすれば、本作はごく初期の作例にあたる。17世紀の伝説を背景に、古城(※1)を舞台としたゴシックの雰囲気をまとった現代劇。何とそこでトチ狂ったマッチョ城主が変態マスクマン姿で犠牲者を拷問しまくるところが本作の特異点である。

モデルのグラビア撮影で古城を訪れたクルーたちのなかに、偶然元カノがいることを発見したマッチョ城主のミッキー・ハージティ(※2)。そこは17世紀の暴君「深紅の処刑人」の居城であり、元カノ登場にネジが飛んだハージティが、深紅のタイツとキャップ、黒いアイマスク姿で、「俺は深紅の処刑人だ!」とモデルとクルーたちを血祭りにするという筋書き。

狂気のハージティがワーハハ!と狂喜しながら、拷問具でひたすら犠牲者たちを責めさいなむのが本作のハイライトで、ヘンテコ揃いのイタホラのなかでも屈指の作品に仕上がっている。ピアノ線を張り巡らした蜘蛛の巣状の罠をこさえ、巨大蜘蛛まで配するが、ギミックが思うように動かないのが悲しい(※3)。

ハージティの過剰反応の背景には、男性だけのホモソーシャルだった古城に女性たち(またはヘテロソーシャル)が闖入したことによる動揺とも見立てられるが、それにしても変態が過ぎる。初期ジャッロの珍作として記録しておこう。

※1 エクステリアもインテリアも実際の古城・宮殿を利用できてしまうのがイタホラの憎たらしいところである
※2 元ボディ・ビルダーという精悍さ。ジェーン・マンスフィールドとの結婚歴がある。彼女の伝記映画ではアーノルド・シュワルツェネッガーがハージティ役だったとか
※3 あまり中途半端なギミックを投入してしまうと、不信の停止が解除される間ができてしまう。実際、これは実物のつもりか機械仕掛けのつもりか戸惑ってしまった。まったく動いていないのに、登場人物に「近づいてきてる!」といわせるのは追い打ち
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