猫脳髄

デモンズ・キラー/美人モデル猟奇連続殺人の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.3
邦題はランベルト・バーヴァの代表作「デモンズ」シリーズにあやかったと思しいが、原題は"Delirium"、精神錯乱である。ストーリーラインは正調ジャッロだが、独特の演出を施しており、その点はデモンズ風と言えなくもない。父マリオによる名作ジャッロ「モデル連続殺人!」(1963)を本歌取りする狙いもあったかもしれない。

男性誌を発行する雑誌社を経営する元モデルの主人公(セレナ・グランディ)が、連続殺人事件に巻き込まれ、自らも命を狙われる…という実に単純な筋書き。ゆえに描写が命になるが、これが変化球で面白い。

野外なのに唐突に赤青の原色ライティング(※1)になったかと思うとハードロックが流れ始め、最初の犠牲者であるモデルの女性の顔貌がいきなり一つ目の怪物に変化する。何かの間違いかと戸惑っていると、その一つ目お化けが何と熊手で串刺しにされてしまう。まずこういう描写は見たことがなく、度肝を抜かれてしまった(※2)。

続く殺害シーンでも同じような演出が繰り返され(殺害方法もオリジナリティを感じる)、このパターンにハマってきたと思っていたら2回でネタ切れになってしまった。後半にかけてやや息切れしたのか凡庸な描写が続いてしまう。主人公は逃げ惑うかオッパイを見せているかだけで、事件の解決にはほとんど貢献せず、状況変化だけで済んでしまうのは惜しい。クライマックスの冗長さもいただけない。

主人公の助手にダリア・ニコロディ、恋人にジョージ・イーストマンことルイジ・モンテフィオリがそれぞれ出演するが、あっさりとした役回りでこれももったいない。このほか、晩年のキャプシーヌが主人公のライバル役で登場する。長編としては彼女の遺作である。

※1 マリオ・バーヴァと言うより、師匠筋に当たるダリオ・アルジェント風
※2 もちろんこういう演出には劇作上の理由があるが、あまりに唐突で驚きが勝つ
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