櫻イミト

ソランジェ 残酷なメルヘンの櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.4
傑作として名高い女子高ジャッロであり、最後のドイツ・クリミ映画とも評される重要作。監督は「ナイトチャイルド」(1975)のマッシモ・ダラマーノ。音楽エンリオ・モリコーネ。撮影は後に監督となるジョー・ダマト。タイトルロールはバスター・キートンの孫娘カミール・キートン。原題「Cosa avete fatto a Solange?(ソランジェに何をした?)」。日本劇場未公開。

【あらすじ】
イギリスのキリスト教系女子高。体育教師ロッセーニと生徒エリザベス(クリスティーヌ・ガルボ)がボートで不倫デート中に川岸での殺人を目撃する。被害者は彼女の同級生で局部にナイフが突き刺されていた。アリバイを言えないロッセーニに疑いの目が向けられる中、第二の女子生徒殺人が起こり、魔の手はエリザベスにも迫る。事件の裏には思いもよらぬ秘密が隠されていた。。。

シナリオ、映像、演出、キャスト、すべてが上手く引き立てあい合致した、噂に違わぬ傑作猟奇ミステリーだった。DVDジャケには「あまりの残酷さに税関で上陸を拒否された」と謳っているが、流血殺害などの描写はないので設定が残酷ということだろう。

シナリオに厚みがあり見応えがあった。前半はフーダニット、後半は隠された謎コミュニティの解き明かしと、タブーの深層に潜り込んでいく流れが秀逸。終盤になって初めて新人物ソランジェ(カミール・キートン)が登場するが、タイトルが布石となっているので唐突感はない。ジャッロにありがちな煙に巻くような複雑さも感じられず、次々と明るみになっていく忌まわしい新事実を素直に楽しめた。

オープニングの赤いモノトーンによる女子生徒描写、回想シーンのモノクロの禍々しさが猟奇性を効果的に醸し出している。ダラマーノ監督がこれまでにも用いてきた犯人主観のPV映像は本作で最も有効に使われていた。

本作がデビューとなるカミール・キートン(当時21歳)は短い出番で一言のセリフも無かったが、タイトルロールにふさわしい存在感を放っていた。後に「悪魔のえじき」(1978)で絶賛されるとのこと。ヒロイン役のクリスティーヌ・ガルボ(当時21歳)は「象牙色のアイドル」(1969)でも女子寄宿舎のヒロインを好演したスペイン女優。代表作「悪魔の墓場」(1974)もいずれ観てみたい。

ジャッロ映画に含まれる一本だが、アルジェント監督やバーヴァ監督の流れよりもミステリー色が強い。イタリアとドイツの合作で原作がエドガー・ウォレスなので、ジャッロの源流であるドイツ・クリミ映画の流れにある原点回帰的な一本と言える。

※ライナーノーツには原作エドガード・ウォレス「血染めの鍵(The Clue of the New Pin)」と書かれているが本作とは内容が違うようなので別原作と思われる※要確認。
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