emily

この庭に死すのemilyのレビュー・感想・評価

この庭に死す(1956年製作の映画)
3.8
採鉱者たちが集まるキャンプ近くの村にやってきたシャークは銀行強盗の犯人と疑われ拘束される。ダイヤモンド鉱山の採堀が禁止された労働者達は政府と対立し、その騒動に巻き込まれ首謀者として指名手配されてしまったシャークは、人質をとりジャングルでサバイバル生活を始める。

 現実離れした強引なストーリー展開、そこで浮彫になる政府のずさんな仕事、ドタバタ劇的な銃撃戦の数々。前半な喜劇の中に時折残酷な描写と、大げさな描写を交差させ、コミカルな糸引きの中に、しっかりと演出の幅を見せる。

 後半のサバイバル状態に集まる人物像達の極限に追い込まれた際の人間の本当の姿があらわになり、餌を吊り下げられた際に見せる人間の悲しくも皮肉な移り変わりの描写が非常にリアル。そこにめぐっていく生命、続いていく命、弱肉強食の世界などの社会的皮肉をしっかり随所に散りばめ、超現実な映像をコミカルな世界で包み込んでいく。

 さらっと楽しく見ることもできるし、深読みしてしっかりそれらの意図を考えた鑑賞の仕方もできる。誰かの死が誰かの生につながる皮肉、すべての人物がしっかり意味を成し、細かい描写にもあとからしっかり意味が重なっていく。人間の醜い部分を辛口で描きながら、そのタッチは軽快である。人間の建前と本音、風当りの悪い人ほど本音で生きていて、心があるのかもしれない。
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