猫脳髄

サンゲリア2の猫脳髄のレビュー・感想・評価

サンゲリア2(1988年製作の映画)
3.3
2023年秋のフルチ祭り⑨

ルチオ・フルチのゾンビ・パニック。原題は"Zombi 3"で、"Zombi 2"を勝手に標榜した「サンゲリア」(1979)の続編に位置づけられるが、もちろん両者には何のつながりもない。しかもフルチは途中降板し、セカンド・ユニット監督のヴィンセント・ドーンこと、ブルーノ・マッテイが追加撮影を行った。作品全体の約4割がマッテイによるとされ、フルチ自身は本作を「最低の作品」と語る。

死者を蘇らせる「デス・ワン」と称する生物化学兵器がフィリピンの研究所からテロリストに強奪され、事故で漏れ出したことでゾンビがフィリピンの市街にあふれ出す。これがすがすがしいほど既存のゾンビ映画の枠組み・モティーフを借用(パクリとも言う)してコラージュしており、製作側が意図したわけではなかろうが、期せずして「ゾンビ映画史映画」と呼べるレベルに達しているのが興味深い。

フルチ作品のゾンビにはアメリカ作品に見られるような前提・ルールはほぼ通用しない。本作では特に致命傷の与え方もマチマチだし、しゃべったり殴りかかってきたりと知的レベルも行動もバラバラである。端的にゾンビメイクの暴徒といった趣だ(そもそも凶暴化した感染者なのか、蘇った死者なのかもよくわかならくなる)。

ただ、一貫性がないゆえに、お化け屋敷のようなバラエティがあり、ゾンビ相手の活劇も相俟って、笑いながら楽しめるところは評価したい。アジア圏を舞台にしたほぼ初となる群集型ゾンビ作品としても特筆に値する。このほか、急階段でのゾンビなめの格闘シーンなど、オッと思わせるショットもあり、あだやおろそかにできない作品に仕上がっている。
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