てっちゃん

サイコマニアのてっちゃんのレビュー・感想・評価

サイコマニア(1973年製作の映画)
4.1
いつものミニシアターにて、「大暴走・野蛮地獄」なる素敵な催し物がやるという情報を見て、密かに目をつけておりましたのが本作。

そんな訳でわくわく気分でミニシアターへ向かいました。
予想通りの強メンツが揃ってますな。
変な映画のときによく見かけるお顔も確認できて嬉しくなりました。

そんなわけでタイトルから素敵なこちらの始まり始まり。
本作は大いにおバカなことを大真面目にやりきり、それをかっこよく描き切ってしまったという奇跡のような作品です。
奇跡と思うのは各自それぞれだけど、少なくとも私はなんて奇跡的なバランスなんだろう!とわくわくにこにこしながら観ていました。

ざっくり内容は暴走族のリーダーである主人公が、母親が傾倒する黒魔術(ヒキガエル)により、不死の身体を手に入れ、不死身のライダーが登場したのです!!という話。
しかもこの主人公と母親の関係性が実に情けないというか微笑ましいというか。
ほら、若いヤンキーは実家住まいが多いみたいな感じ。

主人公がキメ顔で自殺するんだけど、そのときに胸の内に秘める思いは、恐怖心をなくして楽しいことを考えて自殺するのみ!
ほんでオカルトスポットに土葬されると、なんと、、生き返るのです!!

ちなみに主人公は大好きなバイクに跨がった
まま土葬されるのですが(これがめちゃ笑える)、周囲が悲しみに沈んでいたら、ヴォーンと轟音を轟かせて、土の中よりな主人公生還!
めちゃかっこいいシーン。
笑える+かっこいいという奇跡のシーン。

仲間たちの自殺シーンも笑える。
劇的なドラマもなく、淡々とマンションからの飛び降り自殺。
足と腕に重しをつけ、のそのそと池に向かっていき、えいっとジャンプしてどぼん!と溺死。なにこれ。

極め付けは、スカイダイビングで皆が空中でパラシュートを解放させていく中、そんなの要らねえ!と言い裸一貫で空へダイブ!
ご想像の通り、そのまま落下して行きます。

しかも死体はどれもきれいな状態、全然ぐちゃぐちゃになってねえの。
最高でしょ?
ちょっとくらいくちゃってさせても良いのにってくらいにきれいそのもの。

あとバイカー仲間たちとの街中での通行人妨げ危険運転、やりたい放題スーパー?店内をめちゃくちゃにするなどの若気の至りでは済まない、迷惑そのものの迷惑行為が見ていて恥ずかしくなるという不思議感覚も味わえます。

ラストシーンは何故こんな作品なのにぐっとくるんでしょう。
自業自得と言えばそうなんだろうけど、それだけでは留まらない欲望へと突き進んだ末の姿が露見されるのです。
しかも現代アートとも呼ぶべき芸術性すら出てくるのです。

熱く書いていきたけど、おそらく全く面白さが伝わっていないことでしょう。
明らかに危険な匂いしかしないとお思いかもしれません。

が、しかし本作は黒魔術、暴走族、かっこいいバイク、バカ息子を見守る母とまっすぐすぎる恋人らが一斉にゆるゆるになって群がってくるわけです。
このゆるい空気感は、ナポレオンダイナマイトに匹敵するかもしれません。
このゆるい感じが好きな私は堪らんかったわけです。

そんな訳で日本初上映の本作を大いに楽しみ、土葬されるとしたら自分なら何に跨がろうかなと考えてしまうカルト作品でございました。
てっちゃん

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