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ベルタのモチーフのSのレビュー・感想・評価

ベルタのモチーフ(1983年製作の映画)
4.0
思春期の少女の内面を詩情豊かに綴った、スペインの作家ホセ・ルイス・ゲリン長編処女作。

ゲリン自身は意図したかは真意は定かではないが、ゲリンはビクトル・エリセの正統な後継者と称され、『ミツバチのささやき』のように、少女の成長に託して描く。

セゴビアの辺鄙な農村地方を舞台に、モノクロで撮影。本作品は、若干20歳で撮った長編デビュー作にして、詩情に満ちた繊細なドラマの構築という点で、際立った達成度を示している。
やや風変わりな魔術的写実主義の文体が用いられているものの、後年のより実験的なゲリン作品と比べ、古典的な劇映画に近いため、主人公ベルタに容易に感情移入し易い。
むしろ、あえてこの高度な古典的均衡から離れていこうとしているのかもしれない。
例えば、メカスとのビデオレター映画で見る限り、完全な古典主義とも、アングラ及びニューシネマともカテゴライズできぬ端正な作家性を発見する。北鎌倉にて小津の墓参りの様子を納めた同作を見れば納得である。
主人公は、農村で父親の農作業を手伝いながら生活する孤独な少女ベルタである。この少女が、ブレッソンのバルタザールでのアンヌ・ヴィアゼムスキーを妖艶さを抑えた素朴な雰囲気を醸し出しているのだ。
彼女が、車の事故で妻を亡くしたと言い精神を病む奇妙な男と出会い、男はベルタの目の前で拳銃自殺を図る。それを機に平穏だったベルタの内面に変化が起きはじめる。
空想上の金髪の美女のイメージに魅せられながら、少女特有の不安を乗り越える様子が叙情的に描かれる。

外国からやってきた映画女優の役で、エリック・ロメール映画『海辺のポーリーヌ』等で知られる女優アリエル・ドンバルが出演し、サウンドトラックで効果的に用いられるシューベルトの歌曲「さすらい」を歌っている。
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